米文学の翻訳者で大学でも教えている著者が、61歳になった時に1年間の研究休暇を利用してメキシコにスペイン語を学ぶために留学した際の悪戦苦闘の経過報告。米作家の小説にも地名のみならずスペイン語が少なからず出てくるし、ロサンジェルスでのブックフェアに行った時に米国がスペイン語に占領されつつあることを実感したこと、好きな作家達がメキシコの魅力を述べ、小説の舞台にしていることから、留学先はメキシコと決め2010年にグアダラハラに赴き、外国人向けスペイン語学校に通い老姉妹の家に下宿する。
そこから始まった下宿の家主、級友、教師、近隣の住民となかなか通じないスペイン語修行の格闘の日々を、いろいろな場面での体験で知ったスペイン語表現とともに、ユーモアを交え紹介している。さすが翻訳の世界で生きてきた著者だけに、英語とスペイン語の違いや共通点などの指摘、視点は核心を突いていて面白く読ませる。
〔桜井 敏浩〕
(岩波書店(新書) 2017年9月 246頁 820円+税 ISBN978-4-00-431678-7 )