鈴木 康久 レオン前総領事 講演会報告「メキシコ・バヒオ地区の自動車産業と治安情勢」(2018年2月9日(金)開催) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

鈴木 康久 レオン前総領事 講演会報告「メキシコ・バヒオ地区の自動車産業と治安情勢」(2018年2月9日(金)開催)


【日時】 2018年2月9日(金) 15:00~16:30
【場所】 フォーリン・プレスセンター会議室
【演題】 メキシコ・バヒオ地区の自動車産業と治安情勢
【講師】 鈴木 康久レオン前総領事(新任駐ニカラグア大使)
【参加者】 約40名

 1月初旬に帰任された講師の鈴木前レオン総領事は3月に駐ニカラグア大使として赴任されます。鈴木大使は、レオン総領事時代を含め2度のメキシコ大使館勤務を経験され、著書「メキシコ現代史」を出版されています。今回の講演では、大使はバヒオ地区の自動車産業の現状に加え、メキシコの治安情勢についても具体例を交え詳細かつ興味深いお話をされました。講演後、約40名の参加者との間でメキシコの政治・治安状況を中心に活発な質疑応答がありました。要旨は以下の通りです。
 なお、当日の配布資料は協会ホームページに掲載しております(会員限定)。

■1.バヒオ地区について
 中央高原の6州から成り、自働車メーカーを中心とする日系企業の進出により在留邦人数はメキシコ全体の約45%に当る5,000人以上に上り、日本人学校の生徒が急増し、日本人学校設立準備委員会を立ち上げた。2019年春に認可予定。

■2.日本との姉妹都市交流
 マツダとの関係で広島県とグアナファト州、日産との関係で神奈川県とアグアスカリエンテス州との間に姉妹県関係がある。メキシコ市と名古屋市の姉妹都市関係は2017年に40周年を迎えた。

■3.バヒオ地域の自動車産業
 メキシコの自働車産業は輸入代替工業として始まり、デラマドリ政権、サリナス政権の自由化政策の下で、組合活動の少ないバヒオ地域にまずGMがグアナファト州に、次いで日産がアグアスカリエンテス州に工場を設立し、90年代にサプライヤーの進出が続いた。その後、日系企業の他、ドイツ、台湾、韓国などの組立て・部品メーカーの進出が相次ぎ、自動車産業は一大輸出産業に成長した。近年、メキシコの自動車生産は増加の一途を辿り、2017年には総生産台数425万台の内85%は輸出され、国内需要は66万台にすぎない。

■4.輸送インフラ
 バヒオ地域は内陸の高原に位置するため、自動車輸出の主な輸送手段は鉄道と道路である。鉄道では一列車100車両、1日5、6千台から1万台を運ぶ。港湾には自動車専用埠頭がないので、在メキシコ日本商工会議所のロジスティックス委員会が専用埠頭の設置を要請している。

■5.治安状況
 グアナファト州で邦人被害が多い犯罪は、①車上荒らし、②路上強盗であり、逆説的だが「人がいるところが逆に危ない」。抵抗しなければ身に危害が及ぶことはない。麻薬に絡む犯罪も多いが、工場労働者が増え夜勤が増えたことが国内消費増の一因とされている。

■6.大統領選の行方
 世論調査では一貫してロペス・オブラドールの支持率が高いが、私は必ずしも当選の可能性が高いとは見ていない。現在のメキシコ経済はもはやエネルギー(国営石油会社PEMEX)の一本ではないのと同様に、政治も既存政党や古いタイプの政治家は求心力を失っている。オブラドールは過去、PRI、PRDを経て、現在は新党MORENAを立ち上げたが、極左と組合の支持が中心で、産業界の支持は高くないし、女性受けもしていない。

■7.その他
 日系進出企業によると、メキシコ人は真面目でよく働く。メキシコ日産のトップはほとんどメキシコ人である。

【配布資料】
なお、本講演の説明資料はラテンアメリカ協会のホームページに掲載される(会員限定)

「鈴木 康久 レオン前総領事 講演会資料」(PDF)

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