『ハーフ・ブリード』 今福 龍太 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ハーフ・ブリード』 今福 龍太


ラテンアメリカは混血の人たちが大部分を占める。先住民インディヘナの土地にスペイン、ポルトガル等の西欧から白人が侵略征服し、アフリカ系の人たちを大量に奴隷として運び込んだためである。メキシコで使われる独特の禁忌の言葉に“hijo de la chingada”(陵辱された女から生まれた私生児)という究極の罵詈雑言があるが、1500年代のスペイン人による征服からのどうしようもない過去の恥辱を抱えて生きる混血児 -half-breed。それは両親の血筋の組み合わせにより異なった呼称があり、米国に渡った者はチカーノと呼ばれている- には内心に深い痛みがある。本書は、これに同性愛者やトランスジェンダーの人たちを含めたハーフ・ブリード探究の旅の思索集である。
差別や障碍の中にあっての閉塞感、絶望を希望に反転させるべく活動してきたチカーノの詩人、作家、アーティストの運動を、数多くのチカーノ詩を引用しつつ熱く語っている。
〔桜井 敏浩〕
(河出書房新社 2017年10月 366頁 3,800円+税 ISBN978-4-309-24830-1)

〔『ラテンアメリカ時報』2018年春号(No.1422)より〕