長野県の高校生が料理人を志し、東京での4年間の料理修業の後にイタリアに渡りいくつもの店で経験を積んだ後、スペインの当時世界で最も予約が取り難いと言われた『エル・ブジ』の研修生となり、天才シェフ フェラン・アドリアに率いられた料理の真のすごさを体験し、個性豊かな研修生の中でも中南米からの若者たちの意欲に感銘を受ける。その後イタリアに戻り、プライベート・シェフや新作ピザを経験し、かねてから関心をもっていたペルーに向かう。
ペルーでは大統領より有名なカリスマ・シェフ ガストン・アクリオの店で働きたいと考えたからだが、その前にペルー伝統料理を学びたいとリマ南方の日本人移民が初上陸したカニェテのレストランで働き、ついに南米のベストレストラン50の第一位を獲得したアクリオの『アストリッド・イ・ガストン』の調理場に入ることが出来た。しかし、名店での研修は3か月で切り上げ、ペルー料理の母とも言われた店、北部の料理を出す店でペルー料理を修業した。その後イタリアのミラノでの出店を考えたがその難しさから断念し日本に帰国した。海外での10年以上の生活の後、次の関心はアマゾン、ペルー東部のイキトスや北部から奥地まで入り、アマゾン地域の食文化を探求しているうちに良質のカカオに出会い、現在はカカオ料理の可能性の啓蒙に努めている。いつの日か食材の旨みを最大限に活かす、新しい価値観を生み出すアマゾン料理を披露したいと願っている一料理人が探求の半生を綴った雑記。
〔桜井 敏浩〕
(講談社 2018年1月 270頁 1,500円+税 ISBN978-4-06-220877-2 )