カーボ・ヴェルデは、西アフリカのセネガルから約500km離れた大西洋上に10島から成る共和国であり、15世紀にポルトガル人が入植して以来ポルトガル領だったことから公用語はポルトガル語だが、島民の母語はカーボ・ヴェルデ・クレオール語である。著者は、フランス国立科学研究センターのブラック・アフリカ言語文化研究室長所長を務めるマイノリティ言語研究者、訳者は京都外国語大学言語平和研究所嘱託研究員でポルトガル語地域研究・文化人類学専攻。
近年観光地として欧州人の人気が上昇し、同島からの移民が欧州各地にコミュニティを作っているカーボ・ヴエルデについて、本書は元々ガイドブックとして、観光客が現地の人々とコミュニケーションを図れるよう特に言語について詳細に解説したものである。
まずカーボ・ヴェルデ・クレオール語とは何か? 発音と文法の解説から始まり、会話編で自然と環境、生活、カーボ・ヴェルデを歩く、食事、洋服、行政機関、体・健康・衛生、娯楽、宗教、愛情と友情、貧困、アフリカとポルトガルにアイデンティティをもつカーボ・ヴェルデ性、お土産などの会話に事情説明を加え、巻末に参考文献、同国人で最も有名な歌手セザリア・エヴォラ等のCDディスコグラフィー、カーボ・ヴェルデ語と日本語のそれぞれから引ける語彙集、訳者によるクレオール言語とクレオール音楽の解説が付けられている。
1960年代には遠洋マグロ漁船の寄港地として日本人船員が多く訪れカーボ・ヴェルデ人と良好な関係をもち子孫を残し、セザリア・エヴォラが歌う『Sayko Dayo(最高だよ)』という歌もあって、日本とも浅からぬ縁があるカーボ・ヴェルデを知る上で稀有な参考図書。
〔桜井 敏浩〕
(青木敬編訳 晃洋書房 2018年3月 218頁 3,500円+税 ISBN978-4-7710-2980-4 )