『「ポピュリズム」の政治学 -深まる政治社会の亀裂と権威主義化』 村上 勇介編 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『「ポピュリズム」の政治学 -深まる政治社会の亀裂と権威主義化』 村上 勇介編


 少数のエリート(特権層)に対しそれ以外の大衆の要求を実現することを主張し目指す政治家や政治勢力、政治社会運動、またそうした政治のあり方といえるのが、今も世界で広く起きている「ポピュリズム」という政治社会現象である。本書ではまずその発生原因と現代的位相を分析し、取りわけ1930年前後にラテンアメリカで台頭したいわゆる「古典的ポピュリズム」、1970年代末から軍政が民政移管された後、新自由主義改革路線の推進と同時に政治における民主主義の定着という課題の下で、強い指導力をもって直接一般の人たちと感情的繋がりを構築した「ネオポピュリズム」を紹介する。1980~90年代のアルゼンチンのメネム、ブラジルのコロール、ペルーのフジモリがその典型である。続く2000~10年代にはベネズエラのチャベスをはじめとする急進左派政権がラテンアメリカに次々と登場したが、国民の支持を集めたのは10年代初めまでで、その後凋落傾向に転じている。
 本書は、ラテンアメリカの事例を示した第1部、米国と東欧を分析した第2部、アジア・ユーラシアを対象とした第3部の3部構成。第1部ではボリビアのモラレス(岡田 勇名古屋大学准教授)、エクアドルのコレア(新木秀和神奈川大学教授)、ベネズエラのチャベス(村上勇介京都大学教授)の各政権を取り上げており、急進的ポピュリズムに共通した背景とともにその覇権確立の手法、石油・天然ガスというコモディティ輸出の盛況で得た資金源に依存した貧困対策や社会救済政策が支配を長期化させたものの、反対派に対する弾圧から中間層の支持を失い、世界経済の低成長化に因る財源縮小がその施策継続を困難にして、ベネズエラにおいては国論を二分する対立の構図を生じていることを解明している。8人の研究者の論考は、各地域・国でのポピュリズムの比較も出来るように編まれており、いま先進国を含めて世界の多くの国で起きているポピュリズム現象をより深く知るための有用な参考文献である。
                                 〔桜井 敏浩〕

 (国際書院 2018年3月 296頁 3,500円+税 ISBN978-4-87791-287-1)

 〔『ラテンアメリカ時報』2018年夏号(No.1423)より〕