レストラン、バー、舞踊、音楽、楽器、民芸・雑貨、レコードから旅行ライター、旅行代理店、美術館、文化サロン、編集者、通訳など、ラテンアメリカをテーマに起業し、仕事にしている22人に直接取材し、その着眼点、苦労、今後の可能性、展望などを率直に語ってもらって紹介したもの。
ラム酒を中心にしたバーやタンゴを上演する料理店、サルサやマリネラの舞踏スクールなどとともに、ラテンアメリカ文化に関わる催しのサロン「カフェ・イ・リブロス」(東京 目白)デレオン礼子代表、アンデスやメソアメリカ文明の出土品のコレクションを展示する「BIZEN中南米美術館」(岡山県備前市日生(ひなせ))森下矢須之館長、ラテンアメリカ関係書を果敢に出版している「現代企画室」太田昌国編集長など、日本でラテンアメリカへの関心を高めるべく頑張っている人たちが、現実的な課題にどう取り組んでいるかを例示している。
マーケティングリサーチの結果、ラテンアメリカ好きの人には政治・経済・歴史などの勉強から入った比較的高学歴の知識派と、旅行や現地で生活した低所得・若者が多い経験派、そして企業駐在員がいること、ラテンアメリカの文化に興味をもつ人たちはヨーロッパ人による侵略、米国による蹂躙の歴史から左翼的傾向が強かったが、今の若者はインターネットやバックパッカー旅行などから五感で感じる人が多く、文化・芸術等において興味が細分化されて大きな市場にならないという指摘は説得力があるように思う。
〔桜井 敏浩〕
(中南米マガジン 2017年7月 120頁 1,600円+税 ISBN978-4-907766-33-7)
〔『ラテンアメリカ時報』2018年夏号(No.1423)より〕