『大航海時代の日本人奴隷 -アジア・新大陸・ヨーロッパ』 ルシオ・デ・ソウザ | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『大航海時代の日本人奴隷 -アジア・新大陸・ヨーロッパ』 
ルシオ・デ・ソウザ


 日本も戦国時代には奴隷とされる人たちがいて、大航海時代に南蛮商人がマカオ、ゴア、マニラ等アジアから中南米のメキシコ、ペルー、アルゼンチン、遠く欧州のポルトガル、スペインにまで、日本人奴隷を連れ出したが、南蛮貿易の人身売買の史料は極めて乏しい。1577年に豊後(大分県)で生まれた一日本人奴隷が、ゴアで異端審問を逃れてマカオを経由して長崎に来た改宗ユダヤ人商人ペレスに買われ、一家に従ってマニラに移ったが、異端審問の手が伸びペレス家の当主は逮捕されたが、彼の息子は3人の日本人奴隷を連れてメキシコに逃れた。一方、長崎生まれでスペイン人船長に買われてメキシコに来ていた日本人奴隷トメ・バルデスが長崎で彼を見かけていたことから、メキシコシティの異端審問所に告発し、ペレスは捕らえられ財産を没収され、その日本人奴隷は後に解放され自由人となった。
 メキシコでは1590年以降アカプルコに上陸したアジアの自由民・奴隷の公式記録が録られるようになったが、トメ以降も訴訟や結婚許可申請などの記述から日本人の奴隷や自由民がいたことが断片的ながら記録に遺っている。ペルーへは大西洋あるいは太平洋を横断して日本人が辿り着いていたが、1607~13年の期間にリマに20人の日本人が在住していたという史料がある。アルゼンチンにも1597年にコルドバで日本人が奴隷身分からの解放を求めた申し立てを行った記録が遺されている。
 ポルトガルのアジア学研究者で東京外国語大学特任准教授がポルトガルで出版した研究書の一部を夫人が取りまとめたものだが、海外へ出た日本人奴隷の存在は知られていたものの実態については曖昧であった史実を解明した実証研究の嚆矢といえよう。
                                〔桜井 敏浩〕

 (岡美穂子訳 中央公論新社(中公叢書) 2017年4月 1,400円+税 ISBN978-4-12-004978-1)

 〔『ラテンアメリカ時報』2018年夏号(No.1423)より〕