『アンデス古代の探究 -日本人研究者が行く最前線』 大貫 良夫・稀有(けう)の会編 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『アンデス古代の探究 -日本人研究者が行く最前線』 
大貫 良夫・稀有(けう)の会編

 東京大学が「新旧両大陸文明起源の比較研究」のため1958年からアンデス古代文明の調査を始めて今年で60周年。ペルーアマゾン上流のコトシュ遺跡を1960~66年に発掘調査し、先土器時代の紀元前2000年頃に建てられた「交差した手の神殿」と呼ばれるようになった大規模公共建築があったこと、コトシュ神殿が3回にわたって埋めた上に次の神殿が造られていたことを解明し、これに続くラ・パンパ、ワカロマそしてクントゥール・ワシへと続く調査発掘はこの神殿更新説を実証するものとなり、紀元前3000~50年頃のアンデス文明形成期を中心にした日本のアンデス考古学は多大な実績を挙げている。今世紀に入っても2005年から始まった北部山岳地帯のパコパンパ遺跡発掘は「平等だった社会にどのように権力が生まれたか?」権力生成のプロセス解明に努め、海岸地帯でもワカ・パルティーダ遺跡では巨大なレリーフを掘り当てたことは神殿更新の中で行われた儀礼と当時の宗教観の変貌を知る上で画期的な発見となった。ペルー中央高地南部のカンパナユック・ルミはチャビン・デ・ワンタルなど形成期の中心的大神殿から600kmも離れた遺跡だが、文化は周縁に行くほど洗練度が薄れ小規模になるというイメージを覆すものだった。他方、南部海岸地帯のナスカ高原に展開する大きな地上絵研究でも、東大のクントゥール・ワシ調査団出身の研究者が次々と新たな発見と解明を進めている。
 本書は考古学書ではなく、アンデス文明研究の第一線で関わってきた8人の研究者との対話(聞き手は読売新聞文化部の清岡 央記者)を通じて、発掘の意図、経過、成果のみならず、地元住民との交流、遺跡保護とかれらの生活の相克、地元住民の誇りとなったクントゥール・ワシ博物館の建設例など、現代社会との関わりにも触れている。
                                〔桜井 敏浩〕

 (中央公論新社 2018年5月 196頁 1,800円+税 ISBN978-4-12-005082-4 )

 〔『ラテンアメリカ時報』2018年夏号(No.1423)より〕