『狂人の船』  クリスティーナ・ペリ=ロッシ | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『狂人の船』  クリスティーナ・ペリ=ロッシ

著者は1941年にモンテビデオで生まれた1960年から大学予備課程で教師を務め63年に作家デビューしたが、当時のウルグアイはキューバ革命に触発された都市ゲリラ「トゥパマロス」が活動を始め1972年に内戦状態となり、軍がゲリラの鎮圧に乗り出して、学生等を拉致監禁するようになって、左翼系雑誌に寄稿していた彼女は船でスペインに亡命した。スペインもまだフランコ独裁下にあり、フランスと行き来して、アルゼンチン人の作家コルタサルとの親交を得、1974年に本国の軍事政権から国籍を剥奪されて、おそらくコルタサルの助力を得てスペイン国籍を取得し、以後バルセロナを拠点に活動している。

“X”のスペイン語読み equisという名の男性主人公の船旅から物語が始まり、あちこちを訪ね、様々な人々と会話する21の混沌とした断章からなる。エックスがM島(スペインのマジョルカ島)や著者のベルリン訪問で感じたことから書かれた「狂人の船」、隣国アルゼンチンで1976~83年の間軍事政権が行った“行方不明者”の拘禁、殺害した「セメント工場」の章などは、著者の生きてきた背景から意味が深い。

〔桜井 敏浩〕

(南映子訳 松籟社 2018年6月 261頁 2,000円+税 ISBN978-4-87984-366-1 )