『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』 若林 正恭(まさやす)  | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
Japanese English

『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』 若林 正恭(まさやす) 

「オードリー」の売れっ子お笑い芸人が2016年の夏、5日間とれた夏休みが取れるというので、父が生前行きたいといっていたキューバに行くこととし、3泊5日の往復航空便とハバナのホテルの予約を取り、キューバ旅行に出発。羽田からカナダのトロント乗り換えでハバナに着き、ホテルに入って第1日目が無事終わった。2日目は早朝ホテルの屋上から日の出前のハバナの市街と湾を飽かず眺め、待ち合わせた日本語が出来るキューバ人ガイドと革命博物館、カバーニャ要塞、第1ゲバラ邸宅、革命広場等を観光する。表題は、真っ昼間のカバーニャ要塞の炎天下で死んだように寝そべっている野良犬が薄汚く手厚かく扱われている様子はないのになぜか気高い印象を受けたが、東京の表参道でサングラスと毛皮を着て自分をごまかしているような飼い主に、毛がホワホワの甘えて尻尾を振っている犬よりよりはよほど可愛く見えたというところから付けられた。

2日目は普通の観光客が行かないキューバ人の生活に沿ったディープな所へ行きたいと、キューバ在住の日本女性に依頼しておいた生活物資の配給所、市場、闘鶏場等を訪れるが、そこで感じたのは日本の自由競争は機会の平等であり、結果の不平等であるの対して、キューバの社会主義は結果が平等になることを目指していて機会は不平等といえるかもしれないということだった。

見聞記の間に、家族のこと、後日分かってきた父の哲学、芸人として売れるようになるまでの苦闘が差し挟まれ、ごく短い旅行体験ではあるがファンでなくても語り口に引き込まれるところがある。

〔桜井 敏浩〕

(KADOKAWA 2017年8月 107頁 1,250円+税ISBN978-4-04-069316-3 )