アルゼンチンが生んだ不世出のサッカー選手といえば「マラドーナかメッシか?」と聞かれれば、マラドーナはいずれの場合にも「マラドーナとメッシだ」と答える。幾多の試合での名プレーで史上最高の選手といわれる一方で、競技場内外での暴言、暴力沙汰、だらしない女性関係やコカイン中毒、FIFAやアルゼンチンサッカー協会との確執など、破天荒な言動で度々メディアに登場したが、それほどの醜聞があるにもかかわらず世間から忘れられないのは、現役時代の輝かしいプレーの実績があるかだ。
その生きた伝説の頂点は決勝トーナメントでウルグアイ、イングランド、ベルギーを破り、決勝で西ドイツを下して優勝に導いた1986年のワールドカップ メキシコ大会での活躍であろう。特にマルビーナス(フォークランド)紛争の敗戦の復讐であったと公言する準々決勝での対イングランド戦での伝説的な“神の手”をいわれるハンドゴールと五人抜きでも知られる記憶に残るプレーを含め、マラドーナ自身がアルゼンチン代表チームの優勝までの軌跡を赤裸々に自身の言葉で語ったもの。
〔桜井 敏浩〕
(宮崎真紀訳 東洋館出版社 2018年6月 295頁 1,800円+税 ISBN978-4-491-03544-4 )