講演会のご報告「ラテンアメリカの農業・食料バリューチェーンの発展」(2018年9月14日(金) 開催) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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講演会のご報告「ラテンアメリカの農業・食料バリューチェーンの発展」(2018年9月14日(金) 開催)

【日時】2018年9月14日(金)
【場所】日比谷国際ビルB1 会議室
【講師】アジア経済研究所 清水達也研究員
【参加者】約50名

•中南米農業は1970年代までは一次産品輸出が主流だったが、一時産品輸出による経済発展の限界を説いた「プレビッシュ・シンガー仮説」の通り、1980年代ごろまでは輸入代替工業化へのシフトを図ったが、必ずしもこの転換は成功せず、経済危機を経た1990年代には再び一次産品輸出が増加した。背景には新興国の成長、貿易自由化、高付加価値需要の拡大、バリューチェーンの形成などがある。2000年代後半には、世界的な食料危機や金属・エネルギー資源ブームを背景に、エネルギー代替原料としての穀物の需要増、農産物の価格高騰、農地への投資が拡大した。大豆は南米5カ国の総生産が世界全体の53%を占め、トウモロコシの輸出はブラジルが世界第2位である(2016-17年)。青果物輸出はメキシコ、ペルー、チリで2000年代に急増した。

•農業は生産から消費までフードシステム全体を見る必要がある。例えば、ペルーのアスパラガス輸出は、以前は缶詰加工品が主流だったが、現在は伸び悩んでいる。欧州向け輸出に中国品が台頭してきたことが大きい。2000年代から米国冬シーズン用の生鮮アスパラガスの輸出が増えている。また缶詰と生鮮ではバリューチェーン統合の違いがある。ペルーでは2000年代からアグリビジネス・システムの構築と輸出作物の多様化により、生産者も安定・計画的な収入を得られるようになった。

•アルゼンチンでは1970年代に穀物生産・輸出が増え、農作業受託業者が増加した。1990年代後半に中国が大豆の自給政策を輸入に転換した影響があったほか、経済自由化、新技術普及、ネットワーク型の新しい農業生産組織の拡大により、穀物輸出が拡大した。

•ブラジルでは中西部セラードの農地開発と北東部の穀物輸送インフラ、農業フロンティアの拡大により穀物生産が増加した。1980年代の経済危機以降は、穀物メジャーが参入し、バリューチェーンを構築した。2000年代にはGM(遺伝子組み換え)などの品種改良や裏作等が生産を後押しした。3年前の現地調査では、家族経営の生産者の多くが自己裁量の小さいバーター契約での資金・資材調達が主流だったが、徐々に裁量範囲の大きい公的資金や民間融資を使った自立経営が増えている。

•ブラジルでは、大豆輸出は生産の約5割を未加工のまま輸出、トウモロコシは約8割が国内で消費。アルゼンチンは大豆を約2割輸出、トウモロコシは約7割輸出と、税制の違い等もあり国によって差が見られる。中南米の農業はバリューチェーンの発展により、生産性向上、付加価値増を実現してきた。生産中心の家族経営が購買・販売に経営資源を投入することで取り分を増やして成長している。今後、穀物・畜産バリューチェーンは付加価値をあげる余地がある。

•講演後に質疑応答が行われ、①GM食品の安全性、②ペルーの輸出農作物のTPPの影響、③日本の検疫について、④国によってフードシステムや輸出作物が違う理由、⑤ペルーの検疫について、⑥バリューチェーンの整備で生産者の取り分が増えるのか、等の質問が出された。

【配布資料】
なお、本講演の説明資料はラテンアメリカ協会のホームページに掲載される(会員限定)

「ラテンアメリカの農業・食料_バリューチェーンの発展」 (PDF)


アジア経済研究所 清水達也研究員