1943年生まれでブラジルのHIV、カポジ肉腫の研究者としても著名な医師で作家でもあり、カランジル(サンパウロ刑務所)の矯正医を務めた著者が、1940~50年代に少年時代を過ごした同市の移民の町ブラースでの、子どもや大人たちの活気あふれる生活と郊外の農場での休暇の様子を描いた「ブラースの町で」と「両手を上げて」の32編の思い出とエピソードを綴り、訳語解説を付した第1部と、「ブラジルをよりよく知るための12章」という監訳・監修者によるブラジル事情解説コラムの第2部から構成されている。
ブラジルには様々な出自の移民やかつての奴隷の末裔が居て、それらへも大きな可能性を与えてくれたおおらかな古き良きブラジルを、温かく優しく、懐かしく思い起こさせてくれる。
〔桜井 敏浩〕
(伊藤秋仁監訳、フェリッペ・モッタ監修、松葉隆・北島衛・神谷加奈子訳 行路社 2018年3月 195頁 2,000円+税 ISBN978-4-87534-392-9 )
〔『ラテンアメリカ時報』2018年秋号(No.1424)より〕