『ノモレ』  国分 拓 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『ノモレ』  国分 拓

 アマゾン河上流のペルーのマドレ・デ・ディオス川の密林の中に住むイゾラゾ集団が他の先住民を襲う事件がいくつも起きた。ペルー政府の文化省は隣国ブラジルの政府部門でイゾラドの保護活動を続けてきた専門家メイレレスの助言で、イゾラドと言語が近い部族から人材を選び接触を図ることにした。選ばれたのがイネ族の若きリーダーのロメウは、“ノモレ(仲間)”としてイゾラドとの接触を試みる。ロメウは既に村長をしていた時の2013~14年の間にノモレと信じるようになった人々と接触経験があったのである。2015年7月にペルー政府が設けた「監視・統制拠点」で仕事についた数日後に彼らを初めて目撃し、ペルーアマゾン流域の診療所勤務を続けてきたメンディエタ医師の協力を得て、ジャガーに襲われ怪我をした少女のいる対岸に渡り治療したことから一家族の集団との接触が始まり、以後言葉が通じ合うロメウの尽力でしばらく交流が続いた。
 ペルー政府も観光振興の意図もあったが、イゾラドとの遭遇・接触に関するプロトコル(指針)を制定した。しかし、観光や漁猟を求めて彼らの居住地域に入り込む“こちら側”とのトラブルが増え、衝突や殺人、持ち込まれた病原菌により彼らの数は減ってきたと推測され、ロメウによる接触も途絶えたが、かつて接した家族は森のずっと奥で静かに暮らしているという話しを聞いたのがせめてもの慰めだった。
 NHKのディレクターで、「隔絶された人々イゾラド」「最後のイゾラド 森の果て 未知の人々」等の番組に関わり、『ヤノマミ』の著書もあって、アマゾン流域の先住民族にかねがね関心をもっていた著者による「私にとってのロメウの物語」。
                                〔桜井 敏浩〕

 (新潮社 2018年6月 210頁 1,600円+税 ISBN978-4-10-351961-4 )

 〔『ラテンアメリカ時報』2018年秋号(No.1424)より〕