『島の地理学 -小さな島々の島嶼性』 スティーヴン・A. ロイル - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『島の地理学 -小さな島々の島嶼性』 スティーヴン・A. ロイル


ラテンアメリカ関係図書として紹介すると本を手に取った際、目次に「ラテンアメリカ」に関わる項としては小項目に「フォークランド諸島」が2つあるだけなので多少戸惑いがあるかもしれない。英ケンブリッジ大学で地理学を専攻しレスター大学で学位を取り、北アイルランドのベルファスト大学で地理学を講じてきた著者が、世界中にある島嶼について、全般的な所在と数、島の形成と生物、隔絶性と辺境性、人々の移住、コミュニケーションと社会サービス、政治に翻弄される島の歴史、島の暮らしと資源依存、観光が問題解決への万能薬か?など、様々な切り口で実に多くの島の事例を示して論じ、最後にナポレオンの流刑地となったセントヘレナ島を例に再び表舞台に立てるとの結論を導いている。

これらの検証過程で、世界各地の島の事例・引用の中に、ラテンアメリカではカリブ海の大アンティル諸島や西インド諸島、南大西洋のフォークランド(アルゼンチン名はマルビナス)諸島をはじめ、ガラパゴス(エクアドル領)やイースター(チリ名はパスクア)以外は知る人が少ない島々-例えばメキシコ太平洋沖のグアダループやレビヤヒヘド諸島、コスタリカのココ島、コロンビアのマルベル島、チリのホアンファンフェルナンデス諸島(ロビンソン・クルーソーのモデルになった船乗りが船長との抗争の後置き去りにされた島がある)、大西洋海嶺の南米大陸沿いにもブラジル領フェルナンドドゥノロナ、マルティンヴァス、トリニダーデ島などが列記されている。巻末に8頁にわたるカナ名に欧文を付した「島名索引」があるので、知っている島名から本文の記述を探し出すことが出来る。

世界各地に点在する島々の過去と現在、問題などを俯瞰出来る教養書としても読み応えがある。

〔桜井 敏浩〕

(中俣均訳 法政大学出版局 2018年8月 326頁 4,400円+税 ISBN978-4-588-37714-3 )