『ルポ 不法移民とトランプの闘い -1100万人が潜む見えないアメリカ』田原 徳 『ルポ 不法移民 -アメリカ国境を越えた男たち』 田中 研之輔 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ルポ 不法移民とトランプの闘い -1100万人が潜む見えないアメリカ』田原 徳
『ルポ 不法移民 -アメリカ国境を越えた男たち』 田中 研之輔


「移民の国」米国の大統領にトランプ氏が選出されて以来、不法移民規制の動きが強まっているが、今なお中南米、アジア、中東、アフリカから入国し、厳しい条件下で生活している。田原氏は読売新聞ロサンジェルス特派員。メキシコおよびカナダ国境の緊迫した状況、第二次世界大戦下で悲惨な処遇を受けた日系人の歴史、連邦政府の規制強化に抵抗する「聖域都市」との攻防、2017年9月にトランプ大統領が発したイスラム圏からの入国制限に直面したシリア、イラン、イエメン移民が強制送還に怯えて暮らす姿、入国して不法滞在していた青少年の強制送還免除措置(DACA)撤廃猶予期限が2018年3月に切れることから懸念される家族離散を取材し、トランプ政権1年間の不法移民をめぐる米国内の様々な立場の人たちに起きている問題の取材を通じて、米国の移民社会の諸問題が日本でも今後考えざるを得ない時期がやってくると指摘している。
 (光文社(新書)2018年10月 383頁 900円+税 ISBN978-4-334-04377-3)

法政大学准教授で社会学、エスノグラフィーを専門とする田中氏も、滞在資格を持つ正規移民と持たない非正規移民から成る移民国家米国において、強制送還の不安に怯えながらも母国への仕送りのために劣悪な環境下で逞しく生きる不法移民の中に入って2年間働き、見聞した彼らの職場、稼ぎ、快楽と暴力、切り離される家族、罰金、収監におののく日常生活を明らかにし、貧困地区での長期失業や低所得に甘んじて生きる不法移民が、米国社会周縁の底辺層を形成するという社会的排除が社会問題化していると指摘している。トランプ大統領によるオバマ前大統領の施策否定と刑罰強化が顕著になっているが、厳罰化を進めても1,130万人もいる不法移民は「仕事を求めて米国内を移動することはあっても母国に帰ることはしない」と言い、強制送還されたメキシコ人は「大統領よ、お前が何をしようが関係ない。俺たちは何度でも帰ってくるからな」という叫びを紹介してこのルポを締めくくっている。
(岩波書店(新書) 2017年11月 191頁 820円+税 ISBN978-4-00-431686-2)

 〔『ラテンアメリカ時報』2018/19年冬号(No.1425)より〕