『ブラセロ・プログラムをめぐる米墨関係』戸田山 祐 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『ブラセロ・プログラムをめぐる米墨関係』戸田山 祐

 米国にはメキシコ(墨)を初めとするラテンアメリカ諸国からの非合法移民流入が続いており、歴代政権は非合法入国阻止、国内滞在非合法移民摘発強化と合法的な滞在・就労資格を付与する施策の間を行き来してきた。米墨間に一貫してある経済格差と、安価な労働力すなわちゲストワーカーを必要とする特に米農業分野の需要もあり、1942~64年の間「Bracero(出稼ぎ働き手) Program」と呼ばれるメキシコ人農業労働者導入政策が実施された。本書はこのプログラム下での移民・国境管理政策をめぐる米墨関係について、米国へのメキシコ人ゲストワーカー導入政策に焦点を当て、ブラセロ・プログラムの前史と成立と安定化、米墨労働組合の対応、1950年代後半に拡大した後のプログラムが、60年代に米国の農業労働力需要および政治的状況の変化によって廃止に追い込まれていく過程を述べ、米国におけるメキシカンの地位・権利が米墨間の外交関係といかに結びついていたか? プログラム下での移民・国境管理政策、非合法移民への両国の対応、プログラムに含まれていた最低賃金および労働条件の保障規定が、いかに米農業労働組合の権利主張に根拠と機会を与えたかを考察している。

米国へのメキシコ、中米移民の流入をめぐる状況が変わらず、さらに国境地帯での情勢が緊迫化している今、かかるプログラム研究から同様の移民の流れに直面している他国・他地域で、この大規模かつ長期間にわたる移民の流れの枠組みの構築が可能か? その限界と問題点は何かを探求した本書が、この政策の新たな像を示唆するかもしれない。

(彩流社 2018年8月 356頁 3,600円+税 ISBN978-4-7791-2482-2)
 〔『ラテンアメリカ時報』2018/19年冬号(No.1425)より〕