『グローバル金融危機の衝撃と新興経済の変貌 -中国、インド、ブラジル、メキシコ、東南アジア』 河村 哲二 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『グローバル金融危機の衝撃と新興経済の変貌 -中国、インド、ブラジル、メキシコ、東南アジア』 河村 哲二


第Ⅰ部はグローバル金融危機-2008年のリーマン・ショック以降の新興経済発展フレームワークの変貌を「グローバル成長連関」の危機と米国経済、日系電機・電子企業のイノベーションへの課題を産業立地のグローバル化と集積間ネットワーク、韓国の事例で工業機能の集積による国家的都市システムの空間構造の変容について分析し、第Ⅱ部は新興経済の発展フレームワークの変貌と転換、中国、日中合弁企業、インド・メキシコ・ブラジル・東南アジアの経済成長・開発戦略の変貌と転移、韓国・中国金型産業にみるアジアのグローバル・バリューチェーン(GVC)の変化、NAFTA体制下におけるメキシコ自動車産業の発展過程と課題、ブラジルへ進出する中国自動車企業を中心に世界金融危機後の中国企業のグローバル化、2000年代のインドにおける新たな機会と回帰について14人の研究者が解析している。

編者(法政大学経済学部教授)主宰の研究チームでの共同研究でのメキシコ自動車産業の発展上の課題、サポーティング・インダストリー(SI)育成の重要性(芹田浩司立正大学経済学部教授)、中国と中南米・ブラジル経済関係の変化、中国企業のブラジルへの直接投資の要因、中国自動車メーカー3社のブラジル進出戦略の検証、それら進出企業が提示したインプリケーションとしての「後発国型多国籍企業」(苑 志佳立正大学)といった、両国の自動車産業を事例に新興経済の変化を解明しようとした論考は興味深い。

〔桜井 敏浩〕

(ナカニシヤ出版 2018年8月 355頁 3,800円+税 ISBN978-4-7795-1304-6)

〔『ラテンアメリカ時報』 2018/19年冬号 (No.1425)より〕