『タンゴ 歴史とバンドネオン【新装版】』舳(への)松(まつ) 伸男 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『タンゴ 歴史とバンドネオン【新装版】』舳(への)松(まつ) 伸男


大阪で内科医院を開業する医師にして、バンドネオン奏者としてタンゴ楽団リーダーを務めた著者(1930~2018年)が、アルゼンチンタンゴの前史、起源と語源、ミロンガからタンゴへの変化、タンゴがフランス等欧州で認められアルゼンチンでも認知されるに至った歴史を、これまでのタンゴ史研究の積み重ねを踏まえて詳述している第Ⅰ部と、タンゴのリズムの根幹を奏するバンドネオンには、日本とコンチネンタルタンゴで常用されているクロマティコとアルゼンチンの本場で用いられていて著者の得意とするディアトロニコという、外観は同じだが演奏法はまったく異なる二つのタイプがあるとして、その違い、誕生と発達、自身のバンドネオンとの出会い、日本の奏者のパイオニアたち、ディアトロニコの魅力を述べた第Ⅱ部から成る。
 
タンゴの発祥と発祥の地が、ブエノスアイレスの港町ボカで下層階層と娼婦の間から生まれたという俗説を検証し、欧州でのタンゴの評価とバンドネオンの2つのタイプの関わり、タンゴの完成した形式はコンチネンタルタンゴといえるが、それがアルゼンチンでディアトロニコが用いられたのに対して、欧州そして両タイプの差違を理解しなかった日本においてはアコーデオンと共通性があるクロマティコが一般的になってしまった経緯を詳述している。著者のアルゼンチンタンゴとバンドネオン・ディアトロニコへの熱く深い愛情を感じさせる、1991年初版の貴重な解説書の新装版。

(東方出版 2018年6月 234頁 2,400円+税 ISBN978-4-86249-334-7)
 〔『ラテンアメリカ時報』2018/19年冬号(No.1425)より〕