『島の「重さ」をめぐって -キューバの文学を読む』 久野 量一 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『島の「重さ」をめぐって -キューバの文学を読む』 久野 量一


著者は東京外国語大学准教授でラテンアメリカ(スペイン語圏)文学の研究者。思い入れをもつキューバ文学についての2001年以降の論文・学会発表したものを加筆修正し取りまとめた論集。ハバナ旧市街にある「La Moderna poesia(近代詩)」書店を出発点に西のセントロに向けて行きつ戻りつ、文学者の旧居、彼らが通った大学、当時の雑誌編集部などに思いをはせながら、著者が追ったキューバ文学の流れを論述している。

キューバ島は世界の磁場であり特別な存在ゆえに重いとのアイデンティティを自明視する「肯定の詩学」、いやキューバは曖昧で不明瞭な存在だ、言わばこの島には「重さがない」とそれを疑う「否定の詩学」という相反する二つの詩学を両輪に走り続けてきたキューバの文学、キューバ出身の作家を複眼的な視線で追い、キューバ革命と知識人たち、冷戦終結後の「革命文学」の行方、キューバはソ連をどう描いたかを検証するポストソ連時代のキューバ文学、20世紀末のラテンアメリカに現れつつあった新しい風景(それはガルシア=マルケスの『百年の孤独』の舞台の町マコンドをもじりMcOndoと名付けられた)の変貌の中で、ラテンアメリカは「第三世界」ではなくなったか?を論じている。

 (松籟社 2018年5月 253頁 2,000円+税 ISBN978-4-87984-364-7)
 〔『ラテンアメリカ時報』2018/19年冬号(No.1425)より〕