『ガルシア=マルケス「東欧」を行く』 G.ガルシア=マルケス | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会
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『ガルシア=マルケス「東欧」を行く』 G.ガルシア=マルケス

コロンビアで生まれ、ラテンアメリカ文学で最も名高い『百年の孤独』を執筆、1982年にノーベル文学賞を受賞した作家ガルシア・マルケスが、1955年から欧州に住んでいた間に訪れた東欧の国々について、新聞・雑誌に発表すべく書いたルポルタージュを集めたもの。

1957年にコロンビア時代からの友人メンドーサと彼の妹と3人で中古車で東ドイツに入り、東西ベルリン、ライプツィッヒを回ったのが「《鉄のカーテン》とは赤と白のペンキを塗った木の柵である」「支離滅裂なベルリン」「財産を没収された人たちが集まって、窮状を語り合う」の3編、その後ソヴィエト連邦の首都モスクワに入る機会を得て、チェコスロヴァキアとポーランドを訪れた「チェコの女性にとってはナイロンの靴下は宝石である」「プラハの人たちは資本主義と同じ反応を示す」「沸騰するポーランドを注視して」、ソ連については「コカ・コーラの看板がひとつもないソ連」「モスクワ、世界でもっとも大きな村」「スターリンは赤の広場の霊廟で悔悟の念を抱くことなく眠りについている」「ソ連人たちは格差にうんざりしている」の4編を、そして西側視察団の一員として招待された際の見聞を書いた「私はハンガリーを訪れた」の全11編を収録している。

いずれも著者ならではの鋭い観察眼と洞察力で、その後起きたソ連邦の崩壊と東欧諸国の自立を暗示させるエピソードが散りばめられた紀行記である。巻末に訳者によるガルシア・マルケスの執筆活動とこの東欧訪問の経緯や同行者の名を政治的配慮から国籍や職業、名を変えたことなどを紹介している。

〔桜井 敏浩〕

(木村榮一訳 新潮社 2018年10月 201頁 2,200円+税 ISBN978-4-10-509020-3 )