講演会のご報告「ロペス・オブラドール大統領の率いるメキシコと日本」(2019年2月25日 (月) 開催) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会のご報告「ロペス・オブラドール大統領の率いるメキシコと日本」(2019年2月25日 (月) 開催)


【演題】 「ロペス・オブラドール大統領の率いるメキシコと日本」
【講師】 高瀬 寧 駐メキシコ特命全権大使
【日時】 2019年2月25日(月)10:30~12:00
【場所】 新橋ビジネスフォーラム
【参加者】 67名

 中南米大使会議で帰国中の高瀬大使から「ロペス・オブラドール大統領の率いるメキシコと日本」と題してご講演をいただき、昨年12月1日に発足した同政権の主要政策および日本との関係になどついてお話しいただいた。
 講演後、財政健全化政策の影響、新国際空港建設の中止、与党MORENA(国家再建運動)の政権与党としての経験の浅さ、「貧困」の要因、PRI(制度的革命党)の敗因、「国家警備隊」の役割、等について活発な質疑応答があった。

1.ロペス・オブラドール大統領の主要政策

  • ロペス大統領と呼ばず、ロペス・オブラドール大統領と呼ぶのは、母方の姓である「オブラドール」が労働者を意味するので大統領が意識して使っているものと思われる。大統領は就任以来、毎朝6時から治安に関する閣僚会議を開き、7時には記者会見を開いている。
  • メキシコでは、旧政権との政策の継続性齟齬から、伝統的に新大統領就任の翌年は、経済成長率が落ち込む傾向があったが、昨年10月、IMF(国際通貨基金)は2019年の成長率を2018年と同じ2.1%と予測した。新大統領就任直後に一時、ペソ安(1ドル20ペソ台)に振れたが、現在は19ペソ台で推移、インフレも4%台に落ち着いている。
  • ロペス・オブラドール大統領はソカロ広場での就任式で、国民に対し(独立戦争、レフォルマ、メキシコ革命に次ぐ)「第4次変革(4T)」を宣言し、以下の項目からなる100の政策を発表した。特に、汚職撲滅、治安改善、地方開発等国内問題を優先して取り組む方針を明らかにし、現在、国民から80%以上の高い支持率を得ている。
    • 汚職の厳罰化:保釈禁止など。
    • 緊縮財政:大統領を含む公務員給与の引き下げ、歴代大統領の年金廃止、政府専用機の売却等。
    • 格差是正:最低賃金の引き上げ、農産品の低価格販売、若者支援(企業に協力を仰ぐ)等の政策を実施。
    • 治安対策:「国家警備隊」を創設し、全国266の管轄区域に配備する予定。そのための憲法改正を議会で審議中。
    • 地域開発計画:南東部開発、マヤ鉄道敷設、製油所建設、北部国境地帯に経済特区新設。
    • 経済政策:USMCA(米・メキシコ・カナダ協定=旧NAFTA改訂版)を歓迎し、自由貿易政策を堅持。財政均衡化を目指す。現状、経済界とは穏当な関係を保ち、有力企業の代表で構成する「企業家顧問委員会」を設置し民間の助言を仰ぐ。
    • 外交政策:憲法89条の原則(民族自決、内政不干渉、紛争の平和的解決など)を遵守する姿勢。但し、大統領本人は内政問題が山積しているため、外交は外相に任せる方針。トランプ大統領との面談は未だ実現していないが、電話会談を行うなど、対米関係はうまく立ち回っている。ベネズエラ問題については内政不干渉の立場を維持。
    • 移民問題:中米3カ国とメキシコ南部の統合開発計画を提案し、移民問題に対処する一方、米海外民間投資公社(OPIC)等を通じた投資を推進。米国からの送還移民、米国に入ろうとする難民に対しては人道的観点から受け入れている。米国の国境に壁を建設する問題については米国の国内問題との立場。
    • 新国際空港建設問題:前政権が手がけていた新国際空港建設を無駄として中止(北部空軍基地を利用することを提案)。
  • このほか国民投票の実施には憲法改正が必要なことから法的根拠に欠ける「国民へ相談」で対応。新空港建設、国家警備隊の創設については支持を得ている。燃料盗難対策としてパイプライン輸送を止めたが、これも世論の支持を得ている

2.引続き進展する日墨関係

  • メキシコは日本にとって初の本格的EPA(経済連携協定)の締結相手国である。日墨間の貿易額は増加を続けているが、米国が輸出入ともに最大の相手国。日本の対墨投資は急増し、2018年、進出日本企業数は自動車関連を中心に1,228社に達した。自動車関連以外にも、石油、エネルギー、鉱業などへの投資がある。
  • 日本からメキシコへの訪問客は増えている(年間15万人超)が、特に2016年以降、メキシコから日本への旅行者数が急増し、2018年には7万人に達する見込み。
  • ロペス・オブラドール政権の日本に対する期待は、①CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定=TPP11の正式名)を通じてのアジアとの多角的関係構築、②日本の投資・技術移転に対する高評価にもとづく導入、③防災協力の推進、等。
会場の様子
高瀬 寧 駐メキシコ特命全権大使

【配布資料】

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