2019-03-11 15:01:58
【演題】「ボルソナーロ新政権の発足と最新のブラジル情勢について」
【講師】山田 彰 駐ブラジル特命全権大使
【主催】ラテンアメリカ協会、日本ブラジル中央協会
【日時】2019年2月25日(月)15:00~16:30
【場所】汐留ビジネスフォーラム
【参加者】110名
山田大使は、本年1月に発足したボルソナーロ政権の誕生の背景とその特徴、最近のブラジル経済の状況や日伯関係について、自身の見解を交えてお話しされた。講演後、参加者との間でボルソナーロ候補の勝利の要因、大きな政府から小さな政府への転換の意味、キューバや中国との関係、等について活発な質疑応答が成された。
1.ボルソナーロ大統領について
- 昨年の大統領選挙には13人が立候補し、アルキミン候補(元サンパウロ州知事)ほかを最有力としたメディアの選挙予想は悉く外れ、「極右」で少数政党のボルソナーロ候補が勝利した。ボルソナーロ候補はSNSを駆使した選挙戦術で若者の支持を得た。「ブラジルのトランプ」とも言われたが、“何処か”の大統領に比べると、ごく「普通の人」である。スキャンダルにもまみれておらず、クリーンな政治家でもある。昨年9月に暴漢に襲われ、入院せざるを得なくなった結果、一方的なボルソナーロ批判になりかねなかった他候補とのテレビ討論を回避することに結びついたことも、勝因の一因となったのかもしれない。
- 日系人の多いサンパウロ州内で育ち、大の親日家を自認している。昨年2月、日本、韓国、台湾を訪問し、日本では浜松と大泉を訪れた。在日ブラジル人の得票率は8~9割に達した。
- ボルソナーロ政権は「利益調整型」の政治を否定する。閣僚には国のことを最優先して考える軍人を多く登用した。課題は治安・汚職と経済立て直しであり、ラヴァ・ジャット捜査を担当したモロ判事を法務・公安担当大臣に抜擢した。もう一人のスーパーミニスターは経済政策担当のゲデス経済相で、いわゆるシカゴ学派のエコノミストである。課題の年金改革は、数日前に年金受給年齢の引き上げ等を含む法案を議会に提出したが、法案の成否は一に少数与党である新政権がどこまで有効な議会対策が出来るかにかかっている。
2.経済情勢
2015、16年と2年連続マイナス成長を記録した後、緩やかな回復基調にある。失業率は高止まり。2018年の年間インフレ率は3.75%であった。
3.日本・ブラジルの経済関係および日・メルコスールの見通し
- 進出日本企業数は2017年に707社に達し、JBIC(国際協力銀行)の2018年度海外直接投資調査ではブラジルへの事業展開見通しを強化・拡大するという企業の割合が若干増加した。
- 日・メルコスールEPA(経済連携)締結の動きが出ている中で、新政権は二国間FTA重視の姿勢を表明している。ただ、政権発足初の首脳会談となった1月のマクリ・アルゼンチン大統領との会談では、現在交渉中の通商交渉はメルコスール(南米南部共同市場)も含め推進することで合意している。
- 2018年には、眞子内親王殿下によるブラジル5州14都市の訪問をはじめ、日本人ブラジル移住110周年の行事が多数行われた。2019年はアマゾン入植90周年が予定されているほか、6月のコパ・アメリカ(サッカー南米選手権)には日本とカタールが域外国として招待されている。
会場の様子
山田 彰 駐ブラジル特命全権大使
【配布資料】
講演会発表資料「ボルソナーロ新政権の発足と最新のブラジル情勢について」(2019年2月25日 (月) 開催)よりダウンロードして頂けます。(会員限定)