講演会のご報告「アルゼンチンの最新事情とマクリ政権の今後の展望」(2019年2月26日 (火) 開催) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会のご報告「アルゼンチンの最新事情とマクリ政権の今後の展望」(2019年2月26日 (火) 開催)


【演題】「アルゼンチンの最新事情とマクリ政権の今後の展望」
【講師】福嶌 教輝 駐アルゼンチン特命全権大使
【主催】ラテンアメリカ協会、日亜経済委員会、日本アルゼンチン協会
【日時】2019年2月26日(火)15:00~16:30
【場所】新橋ビジネスフォーラム
【参加者】91名

福嶌大使は、昨年一転して経済情勢が悪化したアルゼンチンについて、最新の経済、内政、外交事情を説明された。中でも今年秋予定されている大統領選挙の行方については、アルゼンチンの複雑な政治状況の下での選挙予想を、ご自身の見解を含め述べられた。講演後、参加者との間で、インフレの要因、ラテンアメリカにおける左派の動静、対ベネズエラ政策、等について質疑応答が成された。

1.アルゼンチン概況

  • 昨年11月、G20議長国としてしっかりとその役割を果たし、その外交手腕は高く評価された。日系社会の存在は大きく、南米ではブラジル、ペルーに次ぐ規模で、メキシコと並ぶ日系人人口(6~7万人)となっている。

2.最近のアルゼンチン情勢

  • 2015年までのキルチネル・フェルナンデス政権下では、世界から忘れかけられた存在であったが、マクリ大統領の誕生によって復活し、国内外の期待を集めた。2015   年末から昨年にかけて、相次いで自由化政策を打ち出したが、公共料金の引き上げなど国民の負担が増えたことから政権に対する支持率はしだいに低迷し、最近若干回復したとはいえ、まだ3割程度である。その一方で不支持率は6割に達している。そうした中、今年10月には大統領選を迎える。

3.経済状況

  • 為替危機前(2018年3月前):マクリ政権への高い期待値から急激なペソ高となった。
  • 為替危機後(2018年4月以降):米国の長期金利上昇と干ばつによる穀物の輸出減により急激なペソ安に転じたが、IMF(国際通貨基金)の支援を受け、為替はほぼ安定的に推移し、2020年までの資金需要の目途はついている。主に国外で、再デフォルトかとの噂が一時広まったが、国際機関のマクリ政権に対する信頼度は高く、かつてのデフォルト時(2001年)の状況とは全く異なっている。
  • 2019年の経済成長率は18年に続いてマイナス成長が予想されている(-1%程度)。マクリ政権下で欧米企業および中国による石油・ガス開発投資、リチウム開発投資(豊田通商、中国企業など)が増加した。2027年には石油・ガス輸出国となると予想されており、順調に推移すれば農業国からの転換が実現する。

4.内政

  • 1月の政権支持率は34%と低かったが、前政権の汚職事件が発覚し、マクリ政権の追い風となったている。マクリ政権は「今、変えねば変えられない」との考えで、汚職対策やOECD(経済開発協力機構)加盟表明などを行っているが、少数与党であることがネックになっている。ペロン党の穏健派を抱き込むことでそれが出来る可能性はある。
  • 今年10月の大統領選挙には、マクリ陣営では、マクリ現大統領ほか、ビダル・ブエノスアイレス州知事が、ペロン党からは穏健派のラバーニャ元経済大臣(78歳)、マサ元下院議員、そしてキルチネル・フェルナンデス前大統領が出馬候補として名前が挙がっているが、今のところキルチネル前大統領は無言を通している。10月27日の第1回投票で決まらない場合は、上位2候補で11月4日に決選投票が行われる。
  • 世論調査での好感度は高い方から、①ビダル、②ラバーニャ、③キルチネル、④マクリの順である。ペロン党が穏健派のマサ元議員とキルチネル前大統領との間で分裂抗争になるとマクリ大統領が有利になる可能性はあるが、早い時点でキルチネル前大統領が円満に身を引き、ペロン党がラバーニャ候補で一本化すると、状況は不透明になる。その場合、マクリ大統領がビダル知事の支持に回る可能性が現実味を帯びる。

5.外交

  • マクリ大統領はアルゼンチンを国際社会に復帰させたが、欧米からの投資が進まず、中国頼み(サンタクルス州水力発電所建設、ネウケン州空軍基地など)の状況が進行する可能性も否定できない。

6.対日関係

  • 2018年は、日亜外交関係樹立120周年で多くの記念行事が開催された。2016~19年と4年連続で首相(安倍首相)の訪問が実現されたのも画期的であった。
  • 2018年には、牛肉の相互輸入が解禁された。最近3年間の日系企業の投資(サカタのタネ、キャノン・メディカル、日産等)は23億ドルに上る。
  • 日本・メルコスール(南米南部共同市場)間のEPA(経済連携協定):ブラジルのボルソナーロ大統領は二国間FTA(自由貿易協定)に関心があるとされているが、1月のマクリ大統領との首脳会談で、EU、EFTA、カナダ、シンガポール、韓国など、現在交渉中の通商協定は、予定通りメルコスールとして進めることが確認されている。
会場の様子
福嶌教輝駐アルゼンチン特命全権大使

【配布資料】

講演会発表資料「アルゼンチンの最新事情とマクリ政権の今後の展望」(2019年2月26日 (火) 開催)よりダウンロードして頂けます。(会員限定)