連載レポート10:ラテンアメリカ諸国の国旗に見る不思議 (第9回)キューバ国旗 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載レポート10:ラテンアメリカ諸国の国旗に見る不思議 (第9回)キューバ国旗


連載レポート10

ラテンアメリカ諸国の国旗に見る不思議

(第9回)キューバ国旗

執筆者:西岡勝樹(日本旗章学協会会員)

はじめに

ラテンアメリカ諸国の国旗に見る不思議の第9回はキューバ共和国国旗の不思議である。

1.キューバ国旗


図1 現在のキューバ国旗
出所: https://turismo.org/bandera-de-cuba/

1-1.キューバ国旗の根拠法

キューバ憲法第一章第4条にて国旗、国歌、国章を定めている。国旗は一つ星『孤独の星』の国旗と定める。国旗の詳細は人民国会1983年発布法令第42号にて定めている。

国旗について

国旗の形は長方形と成る。横の長さは縦の長さの倍(二倍)となる。(縦横比 1:2)

同幅の5つの平行帯をから構成される。3つのトルコブルーの帯と白の帯を交互に配する。赤の正三角形の一辺を縦にし、その端を旗の縦幅にぴったりと合わせる。その三角形は中央に五角形の白い星を配する。その星の直径は縦幅の三分の一となる。その星の先端のひとつは上向きに配する。

1-2.キューバ旗の歴史

国旗の日(制定日) 5月20日

1850年5月19日マタンサス州カルデナス市において、今もってキューバにおける最重要な戦いの勝利と独立の自由を勝ち得たこの戦いに初めて、この『孤独の星』の国旗が掲げられた。
これはナルシソ・ロペス将軍(el general Narciso López)が掲げさせたものである。それは詩人であったミゲル・テウルベ・トロン(el poeta Miguel Teurbe Tolón)のデザインが基になった。1868年キューバ独立戦争開始され、1869年4月11日にキューバ国会にて国旗シンボルとして制定された。但し、公式の制定日は1902年5月20日である。

1-3.キューバ国旗の色

正義を我々の理想とするは白色の純潔で表される。その理想を掲げる高貴さは青色で表し、その赤い色には自由を勝ち取る血の色を映し出す。

白:純潔
青:高貴
赤:血と自由

孤独の星の国旗 “La estrella solitaria”

キューバ国旗はLa Estrella Solitaria という。Solitaria とは孤独と言う意味、国旗の中にただ一つだけ輝く星がある。その為にこう呼ぶのだ。キューバ国民の絶対なる自由のシンボルである。

5角星の孤独星は自由なる共和国、独立、キューバであるべき主権国家、キューバ国民の統合を表す。青色の3本の横縞は当時のキューバ国内に配置されていた3つの軍管区地域を表す。それは西方、中央、東方の軍管区である。白い横縞は理想の純白、キューバ愛国者の光を表す。赤色の正三角形は3つの理想:自由、友愛、平等を表す。

図2の右側に掲揚されている旗はキューバ国旗と違いがお分りだろうか。

この旗はアメリカ合衆国の準州の扱いを受けるプエルトリコの旗である。正式には米国連邦自治区の旗である。正三角形と3本の横縞の赤と青がお互いすり替わっている。縦横のサイズも違う。2対3となる。これは1898年米西戦争の結果の賜物だろう。米国はスペインに勝ちキューバ、プエルトリコを従えた。その時の旧き遺産である。

図2. アメリカ合衆国国旗とプエルトリコ米国自治連邦区旗
出所:http://www.topuertorico.org/reference/flag.shtml

2017年スペイン・カタルーニャで独立運動が盛んになった。その時に図3のカタルーニャ独立旗(アスタラーダという)が町中にはためいた。キューバ国旗によく似ている。キューバ国旗だけではなく、プエルトリコ準州旗(連邦自治区旗)さらには、フィリピン国旗にも似ている。なぜだろうか。それは、キューバ、プエルトリコ、フィリピンはともに1898年のスペインとアメリカの戦争(米西戦争)の結果、独立を成し遂げた国々であり、カタルーニャ独立の旗に影響を与えたのである。

図3. カタルーニャ独立旗に影響を与えた国旗