連載エッセイ10:なぜスペイン語を勧めるのか? - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ10:なぜスペイン語を勧めるのか?


連載エッセイ10

なぜスペイン語を勧めるのか?

執筆者:瀧澤寿美雄(株式会社メヒココンサルティング)

外国語下手で、英語が苦手な日本人が、これから新たに学ぶ外国語は何語が適当であろうか?答えは、ずばりスペイン語である。日本人には親しみが持て、馴染みやすく、英語の知識も活かせるスペイン語が有利で、最も学びやすく得する言語であるからである。

今世界にはさまざまな言語が使用され、およそ6000語が存在していると聞いているが、悲しいことに、その半数以上は21世紀の末には消滅してしまう可能性が高いと考えられる。その中でこれからますます言語勢力を伸ばす言葉はいくつかあるが、使用人口の規模から言えば、英語を筆頭に、中国語、アラビア語、スペイン語などがあげられる。それらの外国語の中でこれからスペイン語を学んでみようという賢い選択をした方にこの原稿を読んでもらいたい。

世界各地への言語の拡散という観点からみると、スペイン語は群を抜いている。ネイティブスピーカーの最も多い中国語は大半が中国国内に暮らしているため、広がりという点では低い。一方、使用地域が広く、汎用性が高い英語は国際語としての地位はゆるぎないものの、スペイン語は世界20ヶ国以上で話されている多数派言語としての地盤を確立しつつあり、英語にひけをとらない世界で通じる国際語になりつつある有力言語である。

大学の外国語学部で人気が高まるスペイン語学科

現在、日本国内でスペイン語を専攻できる大学は20ほど存在するが、最近スペイン語学科への入学志願者数、特に女子高校生の人気は高く、受験者数が増えているという注目すべき傾向がみられる。以下は2018年又は2019年のスペイン語学科のある私立と国公立の大学の募集定員数と受験者数の一覧(表1)である。

(表1)スペイン語学科のある主な大学の受験者数(2018/19年、*は国公立大)

大学名 募集人数 受験者数 合格者数
東京外語大* 25 70 26
上智大 50 974 208
清泉女子大 30 156 59
神奈川大 90 531 150
神田外語大 100 142 214
常葉学園大 70 1072 118
愛知県立大* 45 142 47
南山大 60 695 213
大阪大学* 31 76 36
関西外大 250 1827 499
京都外大 60 631 179
神戸市外語大* 40 162 40

出所:数値は、パスナビや各大学のサイトから一般入学試験、大学入試センター利用試験などを含めた合計値を筆者がまとめたもの。

中国語や韓国語がブームであった頃は、スペイン語の人気はいまひとつであった。ところが、人気が復活した理由の中に、スペイン語の持つ美しい響きに加え、ラテンアメリカでも広く話されているスペイン語圏諸国の持つ多様で豊かな文化、日本人にはない大らかなラテン気質などスペイン語圏諸国の魅力が再認識されているためだと考えられる。汎用性や実用価値が高く、英語の次に学ぶ第二外国語として米国でも広く使われているスペイン語がスペイン語学科に所属しない一般大学生の間でも人気の高いのもうなずける。

一方で、ここ数年、自動車産業を中心に日本企業が一斉に米国市場向けの輸出製造拠点を持つにいたったため、スペイン語人口最大の国であるメキシコ(Méxcoメヒコ)への進出が続いているという経済的な背景もかなり影響していると考えられる。しかしながら、2018年に誕生した米国トランプ大統領の自国重視の通商政策により、メキシコへの海外直接投意欲がそがれた。さらに悪いことに、メキシコでは歴史上初の左翼新政権が生まれ、海外直接投資に悪影響を及ぼした。とりわけ、メキシコを北米の輸出製造拠点として重視していた日本企業の戦略の軌道修正せざるを得なかった。

世界中で話されているスペイン語の広域性と拡散力

スペイン語を母語として話す総人口はおよそ5億人といわれ、ヨーロッパ、南北アメリカ、アジア、アフリカにいたる23の国ないし地域で話されている。スペイン、中南米、米国で公用語または日常語として用いられ、米国の自由連合州であるプエルト リコ(Puerto Rico)およびフィリピン、すなわち、、フィリピーナス(Filipinas)以外ではすべて公用語として使用されている。

スペイン語話者数は、中国語、英語、ヒンディー語に次いで世界第4位の位置を占め、英語、フランス語、ロシア語、中国語とともに国連の公用語になっているのは読者の方もご存知のことであろう。世界のいたるところで話されているスペイン語の持つ広域性と拡散力は、注目すべきものがある。アルゼンチンのパタゴニア大草原から西アフリカの赤道ギニアまで話されているスペイン語のこの普遍性は驚きと言えよう。

次ページに、スペイン語圏の地域別分布(図1)とスペイン語が話されている国名と首都名(表2)を示している。国名の発音についてはスペイン語原文の国名の右横にはカタカナ表記でスペイン語読みを加え、原文とカナ表記の太文字はアクセントの位置を示す。

(図1)スペイン語圏の地域別分布

(表2)スペイン語が話されている国名と首都名(国・地域数23)

国名日本語読み スペイン語原文 スペイン語読み 首都名(原文、和文)
スペイン España エスーニャ Madrid マドリ-
アルゼンチン Argentina アルヘンティーナ Buenos Aires エノス アイレス
ボリビア Bolivia ボリビア La Paz らパス
チリ Chile チレ Santiago サンティアゴ
コロンビア Colombia コロンビア Bogotá ボゴタ
コスタリカ Costa Rica コスタ リカ San José サンホセ
キューバ Cuba クーバ La Habanaらアバナ
ドミニカ共和国 República Dominicana レプブリカ ドミニカーナ Santo Domingo サント ドミンゴ 
エクアドル Ecuador エクアドール Quito キト
エルサルバドル El Salvador エル サルバドール San Salvador サン サルバドール
グアテマラ Guatemala グアテマラ Guatemala グアテマラ
ホンジュラス Honduras オンドゥーラス Tegucigalpa テグシガルパ
メキシコ México メヒコ México メヒコ
ニカラグア Nicaragua ニカラグア Managua マナグア
パナマ Panamá パナマ Panamá パナマ
パラグアイ Paraguay パラグアイ Asunción アスンスィオン
ペルー Perú ペルー Lima りマ
プエルトリコ Puerto Rico プエルト リコ San Juan サンフアン
ウルグアイ Uruguay ウルグアイ Montevideo モンテビデオ
ベネズエラ Venezuela ベネスエラ Caracas カラカス
アメリカ合衆国 Estados Unidos de America エスタドス ウニードス デ アメリカ Washington ワシントン
フィリピン Filipinas フィリピーナス Manila マニら
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