本誌2011年夏号の「図書紹介」に載せた前版の大幅な改訂版。20世紀末1994年にラテンアメリカで最初にOECDに加盟、先進国の仲間入りを果たし、21世紀に入ってからは大きく変貌しグローバル化が進展しているメキシコの政治・経済・社会・文化・対日関係の今の姿を、17人の異なる分野の専門家・研究者を動員して紹介している。
変貌した現在のメキシコ社会、経済、拡大した階層・地域格差、汚職文化を紹介した導入部から、21世紀に試みられている社会改革とこれまでの政党とは一線を画すロペス・オブラドール新大統領を選出した2018年7月の総選挙結果の意味するもの、国際政治の中でのメキシコ外交、国境の壁で分断される米国との人の移動、豊富な石油・鉱物資源を持ちながら課題を抱える経済、女性の社会進出や家族形態の多様化、多文化社会の中の先住民、日常的な暴力と犯罪の横行で悪化する治安などの21世紀の社会、改善されてきたが課題もあるビジネス環境、日本企業の進出状況、食・酒・音楽・文学など魅力ある文化、日本とメキシコの長い交流と協力関係などを、70の章と10のコラムで総合的に解説しており、これ一冊で現代メキシコの概要を知ることが出来る。
(明石書店 2019年1月 346頁 2,000円+税 ISBN978-4-7503-4774-5)
〔『ラテンアメリカ時報』 2019年春号(No.1426)より〕