『現代ブラジル論 -危機の実相と対応力』堀坂 浩太郎・子安 昭子・竹下 幸治郎 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『現代ブラジル論 -危機の実相と対応力』堀坂 浩太郎・子安 昭子・竹下 幸治郎


2018年10月18日のブラジル大統領選挙決選投票では、元軍人で超保守的な言動を公言してきたボルソナーロ下院議員が選出された。経済・政治が変調を来し、政官を巻き込んだ大規模汚職の発覚で政治不信が、国民の多くにこの事態を選択させたのであるが、それはまた「ブラジルはどこに向かっているのであろうか」という懸念をもたらすものになった。

本書はブラジル政治学、国際関係論、ラテンアメリカ経済を専門とする著者たちが、まず「第Ⅰ部 今を読み解く」ことから始め、「第Ⅱ部 民主化後の制度設計」では1988年憲法体制以降の国民の政治参加、政治制度とガバナンス、治安などの政治面、新自由主義下での制度設計と競争力強化に向けた産業・企業の挑戦などの経済・ビジネス面とブラジル外交を巡る環境の変化、21世紀のグローバル外交を考察し、「第Ⅲ部 歴史・地誌・人と社会」ではブラジルの“発見”から軍事政権時代までの歴史、広大な国土と豊かな自然、多彩な産業形成などの地誌、多民族から構成される社会、男性主役社会の変化と依然歪みが温存される社会と人を解説して、ここまでで読者はブラジルの基本的知識と背景を理解することができる。

そして「第Ⅳ部 独立200周年に向けて」では、「ブラジルはどこに向かっているのであろうか」という共通問題意識で、ボルソナーロ大統領の下で、国民の自信を取り戻せるか? 中所得国からのステップアップの課題は? これまで左右のイデオロギーに振れた反省から求められた外交が現実主義的な中庸の道を歩めるか? をそれぞれの専門分野から論じている。

コンパクトで平易に書かれているが、現代ブラジルを知るための基礎的な状況、課題、今後の見方が分かり易く説明されている有用なブラジル解説書である。

(上智大学出版(上智大学新書010)発行、ぎょうせい発売) 2019年4月 349頁 2,000円+税 ISBN978-4-324-10573-3)
〔『ラテンアメリカ時報』 2019年春号(No.1426)より〕