チリ共和国カルロス・オミナミ元上院議員とのラウンドテーブル報告 【演題】南米における最近の政治動向(米トランプ政権下で南米はどうなるか?(2019年5月13日 (月) 開催) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

チリ共和国カルロス・オミナミ元上院議員とのラウンドテーブル報告 【演題】南米における最近の政治動向(米トランプ政権下で南米はどうなるか?(2019年5月13日 (月) 開催)


チリ共和国カルロス・オミナミ元上院議員とのラウンドテーブル報

【演題】南米における最近の政治動向(米トランプ政権下で南米はどうなるか?)
【講演者】チリ共和国カルロス・オミナミ元上院議員(元経済大臣、チリ21財団理事長)
【日時】2019年5月13日(月)10:00~11:30am
【場所】米州開発銀行アジア事務所会議室
【参加者】21名

かつて南米諸国は共通性を有し、「一体」しようとした時期があったが、今や一つになるには余りに多様化してしまった。2011年にカラカスで発足したCELAC(ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)もその目標を実現できないでいる。

1990年代には「南米はどうなるか?」という問いに答えることが出来た。90年代の南米諸国は民主化と経済開放という共通項を有していた。その好例がチリであり、例外はフジモリのペルーであった。ペルーは「失われた80年代」後に民主化を模索した南米の中でのアンチテーゼだった。

2000年代初期の南米は、ペルーとコロンビアを除いて、個性的なリーダーの下で左派政権が優勢だった。チャベス(ベネズエラ)、モラレス(ボリビア)、コレア(エクアドル)、ルゴ(パラグアイ)、ヴァスケス~ムヒカ(ウルグアイ)、ルーラ~ジルマ(ブラジル)、ネストール~クリスティーナ(アルゼンチン)など。この時期は、民主化の進展、低インフレ、債務の縮小、貧困の減少等から、南米史上の「黄金期」と呼ぶことができる。進歩派の政府は社会的包摂という共通理念を有していた。

しかし、この社会的包摂は、ポピュリズムの台頭を招くこととなった。その典型はボリビアである。そして、2010年代になると、それら左派政府は徐々に退場していった。

その主な理由は以下の4つの国内的な要因である:
① 産業構造の転換の失敗
② リーダーシップに対する不健全な依存(ベネズエラが好例)
③ 政治改革の欠如(汚職を放置したブラジルの例)
④ 新たな中間層の出現

その結果、保守的な政権が誕生するようになった。政治には経済のような周期性はない。

実際、左派政権はボリビアとウルグアイで存続しているが、両国とも今年(2019年)に大統領選挙がある。コロンビアの大統領選挙では左派が初めて40%の得票率を獲得した。ブラジルは軍部と経済界の連携はまだ生きているが、ボルソナーロ自身は孤立している。チリのピニエラ政権は平凡な政策(雇用創出と治安対策)を執っており、意欲に欠け、政策は功を奏していない。今年10月に大統領選挙を控えているアルゼンチンではマクリの敗北が濃厚であり、クリスティーナ・フェルナンデスの勝利の芽が出ているが、まず信頼回復が必要。

最も情勢が緊迫しているベネズエラは、チャベスの死後、ボリバル革命は方向性を見失い、体制は実質的に崩壊している。マドゥーロはチェスで言うスティルメイトの状態に陥っている。海外からの軍事介入は中南米の連帯を脅かす恐れがある。ベネズエラに必要なのは、国際監視下での公正で開かれた大統領選挙を行うことである。

オミナミ議員の講演後、参加者との間で、南米の産業構造の変革で日本が貢献できること、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定:いわゆるTPP11)についてチリのスタンス、中国とチリの関係、チリと近隣諸国(ペルー、メキシコ、キューバ)との関係、日本とメルコスールのEPA、等について質疑応答があった。

会場の様子