『スペイン語の世界』 岡本 信照 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『スペイン語の世界』 岡本 信照


公用語としては世界21か国で用いられ、スペイン語を母語とする人口は470百万人、米州ではメキシコ以南の北・中南米、カリブ諸国で共通する文化圏を構成している。本書は長くスペイン語研究・教育に従事してきた京都外国語大学教授が、スペイン語の歴史を言語の系統、誕生、中世スペイン語とその後の変容と確立、スペイン語のグローバル化から説き始め、スペイン語の広がりが大西洋を越え、スペインとラテンアメリカにおける語彙の違い、さらにスペイン語と非スペイン語との混成言語に至るまで解説している。中間では実例からスペイン語の意外な語源例を多数挙げており、終章ではスペイン語文学の多様な世界を中世叙事詩とキリスト教文学、16~17世紀の黄金世紀の文学、それに続く18~19世紀の近代、20世紀以降の現代スペイン文学とラテンアメリカ文学の概要を述べている。

スペイン本国とラテンアメリカの語彙の違いに加え、ウルグアイのポルトニョール、米国のスペイン語と英語の混成のスパングリッシュ、小アンティル諸島でのスペイン語・ポルトガル語・オランダ語からさらにアフリカ系言語が混じったバビアメント、ラテンアメリカ文学作家を通して読む語法など、ラテンアメリカに関わりスペイン語に親しんでいる読者にも興味深い“スペイン語の世界”を垣間見ることができる。

〔桜井 敏浩〕

(慶應義塾大学出版会 2018年7月 252頁 1,600円+税 ISBN978-4-7664-2533-8)