『書物の破壊の世界史 -シュメールの粘土版からデジタル時代まで』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『書物の破壊の世界史 -シュメールの粘土版からデジタル時代まで』


ベネズエラ出身の図書館学者・作家でベネズエラ国立図書館長も務めた反検閲活動家でもある著者による、本や図書館破壊の歴史を概観した大部の教養書と言える世界史。メソポタミアに生まれたシュメール文明の文字を粘土版に遺した人類初の書物を皮切りに洪水、戦争、王権の交替、征服や圧政、宗教上の排斥などにより、実に多くの書物が破壊とともに歴史の中で消えてきた。

オリエント・エジプト・ギリシャ・イスラエル・ローマの各古代文明での破壊、中国の秦の始皇帝の焚書、初期のキリスト教から既に始まった魔術・異端とされた文書破壊、東ローマ帝国のコンスタンチノープルで、アラブ世界で失われた図書、中世以降異端審問や大火・暴動など天災厄災の中で失われ、フランス革命や20世紀に入ってのスペイン内戦、ナチスの図書の大量虐殺ビブリコースト、現代文学の検閲や恐怖政権下での禁止書物指定、民族間の憎悪から性・イデオロギー、宗教などの思想の差違による迫害、紙の書物から電子書籍に至るまでの破壊の歴史を概観している。

ラテンアメリカ、スペインに関わる記述としては、中世スペインのイスラム王朝へのレコンキスタ、スペイン人の征服とその後のキリスト教宣教師によるメキシコで焼かれた写本、スペインとラテンアメリカにおける独立戦争と革命時、スペイン内戦時の書物の破壊、アルゼンチンの軍事政権とチリの独裁者ピノチェトの文化に対する攻撃が言及されている。古代から現代に至る世界史の過程で行われた書物の破壊の数々を知ることが出来る本書は、文明の証拠である書物を破壊するという人類が犯してきた野蛮の歴史を知る教養書として一読をお薦めする。

〔桜井 敏浩〕

 

(フェルナンド・バエス 八重樫克彦・八重樫由貴子訳 紀伊国屋書店 2019年3月 740頁 3,500円+税 ISBN978-4-314-01166-2 )