ビジネスマッチングを成功させるには | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

ビジネスマッチングを成功させるには


連載エッセイ14

ビジネスマッチングを成功させるには

 

執筆者:桜井 悌司(ラテンアメリカ協会常務理事)

 

最近、あちこちでビジネスマッチングと言う言葉がよく使われている。またミス・マッチングと言う言葉も頻繁に出て来る。就活生と企業の関係で、就活生が希望する仕事の内容や条件と企業が期待する内容が上手く一致しない状況を意味する。婚活のミスマッチングもよく話題になる。ビジネスマッチングというと、展示会、ミッション派遣、ビジネス・ミーテイング、シンポジウム等によく活用されるようになっている。みんな、具体的成果を出すことに必死であることからこの手法が使われるようである。あらかじめマッチングに参加を希望する者(A)に面談を希望する企業や人物、希望する理由・背景等をアンケートや面談取材をし、それらデータに基づき、Aとのアポイントを公募するスタイルが通常である。Aがブースを持ち、そこに応募者が立ち寄る場合もあるし、当事者が合意した場所に集まることもある。当事者が意見交換し、合意に達するプロセスであるが、言うは易しでうまく行くケースは意外に少ない。その理由について紹介したい。

 

「ローカル・トウ・ローカル事業にみる日本人とイタリア人経営者の違い」

 

 私がミラノに駐在した時期(1996年6月~1999年9月)の直前から、ジェトロ事業の一つとして「ローカル・トウ・ローカル事業」が始まった。この事業は、日本の地方の都市の企業、特に中小企業と外国の地方都市の企業との経済交流を通じて、地方の発展・活性化を図るというプロジェクトである。イタリアはイメージが良いのか、繊維を中心に超人気国で、都道府県から実施の要望が多数あった。当時のプロジェクトをみると、下記のとおり盛りだくさんであった。

  コモ/ブリアンツア―石川県(繊維)  ②プラート―福井県(繊維)

  カルピ―墨田区(ニット製品) ④ボローニャ―板橋区(機械)

⑤ プラート/エンポリ―岡山(繊維・縫製) ⑥ミラノ―神戸(縫製・デザイン)

⑦ ミラノ/ビエッラ―岐阜(ウール繊維)  ⑧ミラノ―鹿児島(デザイン)

 

 仕事の内容は、ジェトロがプロジェクトに500万円~1、200万円を限度に支援し、1年から3年の期間で、日本の業界が希望する外国の業界との関係を緊密にし、共同で事業を推進するというものである。ツールとしては、ミッションの派遣・受け入れ、展示会への参加・組織等があった。

 

 日本の企業は、真面目にプロジェクトに取り組む例も結構あったが、補助金をもらえるのならやっても良い程度の考えで取り組む組織も多かった。日本からイタリアにミッションを派遣するとなると、イタリアの持つ観光的魅力のせいか、結構な人数が集まる。メンバー・リストを持って、イタリアの受け入れ業界団体に行くと、ミッションメンバーのそれぞれが具体的にどの商品に関心を持ち、何をしたいのかを細部にわたって聞かれることになる。イタリアの企業は個人経営が多く、トップに権限と情報が集中している。彼等にとって、日本からわざわざ貴重な時間と多額の金をかけてイタリアに来るからには、具体的な商談を持って来るに違いないと考えるのである。ところが、日本企業から参加する人は、少数の例外を除き、目的意識がかなり曖昧で、観光半分、仕事半分といったところである。イタリアに行って何か興味ある案件があれば、持ち帰って検討しようといった感じである。まさに銀座でウインドーショッピングをするようなものである。イタリア側にとってみれば、そんな企業とは会っても仕方が無いということになる。日本側はイタリア側の真剣さに徐々に気がつき対応することになったが、常に後手後手に回ることになるのが常であった。日本企業は要するに結構気楽なのである。このようにイタリア側と日本側の発想、考え、行動の違いに大いに悩まされ、苦労した。アプローチするほうに極めて具体的な案件やアイデアが無いとうまく進まないのである。ビジネスマッチングは、双方が真剣でないとうまくマッチしないのだ。イタリア人の考え方を把握した後は、割合スムースに進むようになった。

 

「外資誘致とミスマッチング」

 

 ラテンアメリカ諸国は、いずれの国も外資誘致に熱心である。口では外資誘致の重要性を訴え、勧誘するが、自分たちの魅力、投資環境、誘致を希望する業種とその理由、外資に対するインセンテイブ等が必ずしも具体的かつ明確でないか、投資家の必要とする情報が不十分である。投資勧誘するからには、自分たちの有利な情報や不利な情報をすべて具体的に、かつ他国との比較でアピールすることが大切であるが、少数の例外を除きラテンアメリカの投資誘致機関はうまく対応してくれない。

 

 ラテンアメリカ諸国の政府高官は、日本から中小企業を誘致したいと言う。心情的には、十分理解はできるが、それほど容易なことではない。大企業でさえ誘致が難しいのに、中小企業ともなると困難度はさらに増加する。日本の中小企業の海外進出の場合、様々なケースがあるが、自動車産業のようにアッセンブラーがまず進出し、引っ張られて、子会社や関連会社の自動車部品産業の中小企業が進出する例が比較的多く見られる。中小企業にとって、アッセンブラーの傘の中で護送船団の一員として投資するというイメージである。中小企業が単独で投資する場合は、製品の販売先が安定していること、良いパートナーに恵まれていること、投資額が小さいこと等の条件が整っている場合のみである。このように考えてみると、ビジネスマッチングの場までたどり着いても、必ずしもうまく行かないことが想像できよう。

 

投資誘致セミナーの後で、「ビジネスマッチング」の時間が取られることがあるが、お酒を飲みながらのマッチングはほぼ機能しない。やはり、面と向かって真剣に面談しないとうまく行かない。またほとんどの相談企業は、具体的案件を持っているわけではないので、ビジネスマッチングというより、投資相談タイムと言ったほうが良いかもしれない。

 

「展示会・見本市でのビジネスマッチングは効率的か?」

 

 多くの人は、展示会・見本市は絶好のビジネスマッチングの場と考えがちである。しかし、結構落とし穴がある。何故なら、まず第1に、日本の展示会は、PR型が多く、商談型の展示会が少ないことが指摘できる。多くの出展者は、来場者の名刺を集め、展示会終了後にコンタクトすると言う方法を取る。欧米の展示会のようにその場で商談し、1年や半年の注文をするということになっていないのである。第2に、展示会は、出展者と来場者によって成り立っているが、展示会の主催者によっては、出展者の勧誘に多くのエネルギーを使い、良質の来場者を多数勧誘するところまで力が及ばないケースが多い。第3に、出展者も来場者もともに、相手側の情報が十分でなく、用意周到の状況でビジネス・マッチングに臨むようになっていないのだ。展示会では、多くの企業が出展するのでいくらでもビジネスマッチングができると考えるのは大きな間違いである。出展者もそれ相応の準備をし、あらかじめポテンシャル・カストマーズにコンタクトしておく用意周到さが必要である。

 

 展示会でのビジネスマッチングの場合、私は次のような提案をしている。総じて、企業は毎年出展することが多いので、主催者が発行する出展者カタログを過去2年分入手し、自分の関心のある商品や企業のリストを作成し、事前に関心企業にコンタクトするのである。詳細に自己紹介をし、自分の関心のある商品やプロジェクトを具体的に紹介し、展示会場でのアポイントを事前に取得するという方法である。

 

「では、ビジネスマッチングでの成功の秘訣は?」

 

今、私は農林水産省委託の「中南米日系農業者との連携交流・ビジネス創出委託事業」の事業推進委員会の委員をしているが、この会議でもビジネスマッチングが重要な仕事となっている。要するに中南米のブラジル、ボリビア、アルゼンチン、パラグアイ、ペルーの日系の農業関係者と日本の企業や農業関係者とのマッチングを図る仕事である。

 

会議では、次のような発言をしている。

今まで、何回もビジネスマッチングの仕事をしてきたが、多くの場合、失敗ないしは成果が得られなかった。敗因を分析すると、孫子の兵法でいう『敵を知り、己を知れば、百戦危うからず』のラインに沿ってやってきたのが間違いであったということに気がついた。最も重要なことは、まず最初に、己を徹底的に相手側に紹介するとともに、自分の企業、商品、考え方、戦略、プロジェクト等を極めて具体的にアピールし、理解してもらうことである。もちろん、己を知り、敵を知ることは重要であるが、自分をしっかりアピールすることの方がもっと重要なのである。自分の意図が明確になると相手側も重要な情報を提供してくれるし、プロジェクトに真剣に取り組んでくれるようになる。実践されることをお勧めする。

以   上