国際政治学者で現在は国際協力機構(JICA)理事長である著者によれば、見慣れた世界地図も大国の周辺国から国際秩序を見直せば、まったく新しい「世界地図」が浮かび上がる。インド太平洋構想、ロシアとジョージアとアルメニア、ウクライナといった隣国、ロシアの影響下から独立し大国を頼りにし過ぎる危険を学び思慮深い外交をするフィンランドから見るロシアとの付き合い方、アフリカのウガンダ、アルジェリア、南スーダン、エジプト、ザンビアとマラウイに見る中国の影、南太平洋と海洋国家日本との親密な関係を維持できるかをパプアニューギニア、フィージーとサモア、独裁と民主主義の狹間で試行するミヤンマー、ベトナム、さらに東ティモール、アフガニスタンとタジキスタンなど、訪れた国々について書いた短い文章を集成したもの。
中南米については、「遠くて近い中南米 -絆を強化するために」で、ブラジルの「日系人」を超えた協力関係を築いた足跡を、コロンビアがインフラ整備で国の統合-「和平」を支援する姿を紹介している。終章「世界地図の中を生きる日本人」で、「ソフトパワー」の作り方、国際会議におけるプレゼンスなどを提起している。
〔桜井 敏浩〕
(新潮社 2019年5月 252頁 1,300円+税 ISBN978-4-10-603840-2)