総務省・ソフトバンク講演会「ラテンアメリカでのICT事業:日本の官民の取り組み」(2019.06.19開催) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

総務省・ソフトバンク講演会「ラテンアメリカでのICT事業:日本の官民の取り組み」(2019.06.19開催)


6月19日総務省・ソフトバンク講演会「ラテンアメリカでのICT事業:日本の官民の取り組み」

【演題】「ラテンアメリカでのICT事業:日本の官民の取り組み」
【講演者】総務省国際戦略局国際協力課 西野 寿律 企画官
ソフトバンク(株)IoT & AI技術本部 IoT技術戦略統括部 e-kakashi推進課
戸上 崇 課長 (博士(学術))
【日時】 2019年6月19 日(水)15:00~16:30
【場所】 航空会館9F 901会議室
【参加者】48名

1.西野総務省国際戦略局企画官:「総務省におけるICT分野の中南米の取組について」

• 日本政府は、世界の膨大なインフラ需要を取り込むことで力強い成長に繋げようとの目標の下、2020年に30兆円のインフラシステムの受注を目指している。総務省でも、2006年のブラジルを皮切りに、2017年のエルサルバドルまで14か国で採用されている地上デジタル網の整備で培った中南米での人脈を利用して、通信、放送、郵便事業の分野での海外展開を進めている。

• 中南米は人口約6億人、域内総生産約5.1兆ドルの経済規模を有し、インフラ市場としてのポテンシャルは非常に高 い。総務省では、放送分野での中南米各国政府との協力を足掛かりに、防 災ICTなどの他分野への展開を進めている。今後の方向としては、ICTを利活用した社会課題の解決として、質の高いインフラの整備や日系社会との連携強化を通した「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に貢献したいと考えている。

• 具体的には、2017年以降、ペルー、ブラジル、チリでスマホを使った遠隔医療サービスの実証実験を展開中で、2019年にはこれをコロンビアやメキシコにも広げて行く予定。2018年には、ソフトバンクの協力を得て、IoTを活用した農業支援プロジェクトなどの実証実験を実施した。防災関連では、ブラジルの遠隔河川監視システム、ペルーの災害情報共有システム、ペルーとチリでの地震・津波観測海底ケーブルシステムなどなど、日本の経験と技術に対する期待を反映して最も事例の多い分野となっている。

• 近年、総務省としては中南米各地で開催されたICT国際会議に積極的に参加する一方、国内外の機関との共催で会議やセミナーを開催している。昨年は世銀や米州開発銀行との共催で中南米でのICT投資促進をテーマにした「中南米ICTセミナー」を東京で開催した。その他、各国政府の情報通信担当大臣や幹部の招聘、日本からの官民合同ミッションの派遣などを行っている。

• 総務省は中南米以外も含め、今後、日本のICTインフラシステムの海外展開に向けた取り組みを一層強化する方針で、そのためのICTグローバル戦略を策定し、本年5月に公表した。その戦略全体に通じる基本精神はSDGsの実現である。この基本精神は、G20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合のテーマにも反映された。中南米の関連では、この会合の議題の一つの「デジタル経済におけるセキュリティ」はブラジルを含む中南米各国でも関心が高く、今後の中南米との協力分野の一つになると考えている。

2.戸上 崇(博士(学術))ソフトバンク(株)IoT & AI技術本部 IoT技術戦略統括部 e-kakashi推進課長 「コロンビア共和国における農業IoT “e-kakashi” の取り組み」

• 農業は自然の営みと語らいながら取り組む産業との理解から、自然に優しいクリーンでエコなイメージが持たれているが、実際は、農業は環境負荷が最も高い産業である。例えば、日本の農業はどの産業よりもはるかに大量の水(年間54兆㍑)を消費している。水資源の有限性から、将来的には世界規模の水資源確保の競争が危惧される。そういう意味で、水量最少化・収量最大化が農業の大きなテーマの一つ。更に、光合成(二酸化炭素を吸収し酸素を排出)によって地球環境に適合している半面、温室効果ガスの一つのメタン(CH4)の地球上の総排出量の20%が水田から放出されている。

• 植物3大栄養源の一つの窒素肥料の内、植物本体に吸収されるのは施肥量の30%程度に過ぎず、残りの70%は地中に流亡するか空気中に放出され、赤潮や地球温暖化の遠因になっている。そのほか、日本では少子高齢化の進行で栽培技術やノウハウの世代間継承が喫緊の課題になっている。更に、最近は消費者の食味や食の安心安全へのこだわりが強まり、その分、栽培技術や品質管理など、農業現場へのプレッシャーが増している。これがアナログ農法から脱却し農業を科学する農業IoTシステム”e-kakashi”開発の動機である。

• e-kakashiは、IoT、ビッグデータ、AI、CPS(サイバーフィジカルシステム)などの最先端技術を駆使して、様々な圃場環境データを収集・分析・計算して農家に最適な解決方法を提供することで、農家の生産性向上や人材育成、農業の持続可能性や環境負荷の軽減等々への貢献を目指している。このシステムのユニークなのは、単に環境データの収集に止まらず、それを植物科学と融合させて、即適用可能なアドバイスを農家に提供する点である。このシステムで使用するデバイスは圃場環境条件や植物科学に基づいてカスタム設計したもので、それを搭載した端末他から集積されたビッグデータをAIで体系化し、それを基に個別の圃場条件(使用農業機械など)に即した解決案をアウトプットしている。

• 本システムは国内各地のベテラン農家との実証実験や農業大学での教育実習を繰り返し、高い評価を受けて来た。海外展開は、2016年に世銀傘下の国際熱帯農業センター(CIAT)からコロンビアでの農業IOT実験の問合せを受けたのがきっかけ。プロジェクト初年度に、CIATの膨大なデータをベースに現地品種の開花期や収穫期などの予想値を算出し、試験圃場での実証結果、2日程度の誤差に止まり、システムの信頼性が証明され、同時に、農業用水の節減や排出メタンの削減効果も実証された。2018 年度からは同じコロンビアでこのシステムを使用した総務省プロジェクトが開始された。

既に現地で5回のワークショップを重ね、現地生産者団体でのシステムに対する認知度が高まっている。2年目には圃場での実証実験が始まる。ここでの最終的な狙いは、コロンビアに誰でもアクセス可能な農業情報プットフォームを構築することで、それに向けしっかりした歩みが続いている。更に、コロンビアでの三番目の取り組みとして、来年度からは小農を対象とした米州開発銀行(IDB)のプロジェクトが立ち上がる。今後は、日本企業などとチームを作り、コーヒーやワインなど、対象作物を広げて行きたい。

終了後、総務省の海底ケーブルの取り組みや、ソフトバンクが農業IoTを参入した経緯などについて活発な質疑応答がなされた。

会場の様子


配布資料

西野総務省国際戦略局企画官:「総務省におけるICT分野の中南米の取組について」

2.戸上 崇(博士(学術))ソフトバンク(株)IoT & AI技術本部 IoT技術戦略統括部 e-kakashi推進課長 「コロンビア共和国における農業IoT “e-kakashi” の取り組み」