『ハポネス移民物語』川村 湊 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ハポネス移民物語』川村 湊


 日系移民文学の研究を思い立って2010年から8年間、毎年夏休みの1か月間ラテンアメリカに足を運んで資料収集と現地調査、インタビューに努め、「日系移民および韓国系移民による文学の総合的研究」という題目で科学研究助成費も受けて、ブラジルを皮切りにアルゼンチン、ペルー、ウルグアイ、パラグアイ、チリ、ドミニカ共和国、ボリビア、メキシコ、コロンビアを歴訪して纏めた、戦前・戦後の日本移民の他地域との比較も交えて概観したラテンアメリカ日本人移民史。
 カリブ海の楽園と言われたドミニカ共和国に杜撰な政府調査によって送り込まれた移民の悲劇、沖縄での米軍基地の拡張の経緯からボリビアに赴き出来たオキナワ村と、日本・ボリビア政府間移民協定により開拓が始まったサンファン村があるボリビア、南米では最も早く移住が始まったが、戦時中は強制収容されるなどの辛酸をなめたペルー、1936年に移住地が出来て戦後いち早く積極的に日本人移民を受け入れたパラグアイで、近年は大豆等大規模機械化農業で成功した日系人を出している姿、小説の美少女主人公に憧れたスペイン語学徒の移住から始まり、内戦で苦労したコロンビアなどの事情と現地での見聞を紹介し、最後の章で日本人による日本語の文学ながらラテンアメリカ文学と認められる移民作家として、ブラジルの松井太郎とアルゼンチンの増山 朗の二人を、最後の移民物語の書き手と論じている。
 沢山の日本人移民に関わる資料に目を通し、現地調査での見聞で纏めているが、移民支援体制の中での国際協力機構(JICA)と日本貿易振興機構(JETRO) の混同など、不正確な記述が散見される。

〔桜井 敏浩〕

(インパクト出版会 2019年1月 231頁 2,300円+税 ISBN978-4-7554-0289-0)
〔『ラテンアメリカ時報』 2019年夏号(No.1427)より〕