『移民と日本人』深沢 正雪 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『移民と日本人』深沢 正雪


 古には1596年にアルゼンチンのコルドバに奴隷として日本人青年が来たという記録が発見されているが、以来特に明治時代後半から昭和の前半に多くの日本人が海外に移住した。一方1980年代後半からは多くの日系人が外国人労働者として環流してきた。この間ブラジルはじめ外国にいる日本人移民とその子孫が生きてきたことは、日本史での“ミッシングリング”ではないかという著者による、彼らはなぜ? どのような人たちが出たのか? そのような人たちが移住先でどのような影響を与えたのか? 国外へ出たことで日本人の視野から飛び出してしまった人たちはどのように生きてきたか? を明らかにし、日本人が外国で活躍してきた歴史を知って欲しいという意図で書かれた、移民の側からの日本の近現代史の試みである。
 明治末期から大正時代にかけて出た人たちは、経済的貧窮者という共通項があるが、明治維新への不満者、沖縄県人、隠れキリシタン、被差別部落出身者など、社会的迫害を受けた階層、自由民権運動で挫折した知識層やキリスト教プロテスタント、明治政府と距離を置いた宮家の人もいた。ブラジルだけでも25万人が渡り、現在その末裔も含め190万人の日系人が居るのはなぜか? 日本に帰来した隣りの“外国人”はどのような人たちか? 「移民は壮大な民族学的実験だ」という先人の言をきっかけに本書を書いたのは、サンパウロの邦字紙ニッケイ新聞の編集長。ブラジルや米国での移民への教育の考え方から、「日本で育った外国人を日本に適応させ忠誠心を強めるには、出来るだけ日本の高等教育を受けさせることだ。外国人が異邦人であり続けるのは、差別されたり追いやられる格差が維持されるからだ」という指摘は大いに頷ける。

〔桜井 敏浩〕

(無明舎出版 2019年6月 173頁 1,800円+税 ISBN978-4-89544-653-2 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2019年夏号(No.1427)より〕