『麻薬王の弁護士』  トッド・メラー | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『麻薬王の弁護士』  トッド・メラー


コロンビア等南米や中米の米国外の麻薬犯罪者の米国での訴追の弁護をして、司法取引などの法廷技術を駆使して無罪あるいは刑の軽減を獲得し、法外な報酬を得る「国外犯罪人引き渡し代理人」を称する弁護士ベン・ブルーストーンは、ニューヨークでのクリスマスの日にボゴタの弁護士から新たな依頼人を紹介するからグアテマラに来るようにとの連絡を受け、パナマの友人からかなり多額の対価を得られる仕事の誘い電話が続き、コロンビアの弁護士からもすぐに来るようとのEメールを受け取った。そろそろ最後の一大勝負で大きな仕事を行い大金を稼いで引退をと考えていたベンは、ほとんど同時期に始まったこれらの仕事話に乗りマイアミからパナマ、カラカス、グアテマラの旧都アンティグアを訪れる。それぞれの関係者からの依頼は究極には“ソンブラ(影)”と呼ばれる謎の麻薬王が誰で、その取り引きの内容は何かということに結びついてくる。ニューヨークのベンの事務所のあるブルックリン、拘置所をはじめ、コロンビア、パナマ、グアテマラ、ベネズエラ、プエルトリコと、舞台は中南米各地をめまぐるしく移り、時には暴力の応酬を交えて展開する。

著者自身も刑事裁判の弁護活動を30年にわたって行ってきて、麻薬カルテルのトップの弁護で無罪や減刑を勝ち取ってきた弁護士であり、著者の分身と言えるベンを主人公にした臨場感あるサスペンスに仕上げている。

〔桜井 敏浩〕

(早川書房(文庫 NV1451) 2019年4月 655頁 1,560円+税 ISBN978-4-15-041451-1 )