講演会報告 JICA中南米4か国事務所長が語る中南米の魅力 ~パナマ、ニカラグア、ボリビア、ブラジルから~ (2019.09.04 開催) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会報告 JICA中南米4か国事務所長が語る中南米の魅力 ~パナマ、ニカラグア、ボリビア、ブラジルから~ (2019.09.04 開催)


【日時】
9月4日(水)15:00~17:00

【講師】
吉田憲JICA中南米部長(冒頭挨拶)
石丸憲JICAパナマ事務所長
名井弘美JICAニカラグア事務所長
小原学JICAボリビア事務所長
佐藤洋史JICAブラジル事務所長

【後援】
国際協力機構(JICA)

【場所】
田中田村町ビル5F 5A会議室

【参加者】
81名

4名のJICA中南米所長(パナマ・ニカラグア・ボリビア・ブラジル)から、各国の概要、最新の政治・経済・社会情勢、開発課題、そしてJICAの取組みについて説明いただきました。講演後、参加者からはブラジルとボリビアの医療状況、ボリビアの対中牛肉輸出、アマゾンの農地拡大と森林保全、パナマの観光開発、パナマのハブ化、ボリビアのリチウム開発、南米横断鉄道、ニカラグアと台湾の関係、など多岐にわたる質問が出された。

講演会内容

  • 石丸憲パナマ事務所長:「パナマ~『運河の国』の挑戦」

    • 2019年7月に誕生したコルティソ政権にとって、バレラ前政権で失速した経済成長をどう回復出来るかが課題だが、財政悪化が制約要因になっている。
    • それ以外の課題としては、

      • 降雨量の減少による運河の代替水源の確保
      • 単に運河の通航料収入だけでなく、観光やコンベンション等のサービスの充実
      • 都市問題(ゴミ、水、公共交通機関)
      • 貧困・格差問題(国民の約4分の1が貧困ライン以下)
    • JICAの取組み

      • 教育(小学校の算数の教科書作り)
      • 公共交通手段の整備;モノレール・システム導入プロジェクト
      • 研修生を通した地方の生活改善運動、一村一品運動などの紹介
      • JICAと民間企業との連携拡大
      • 姉妹都市、NPO法人を支援
      • パナマ市水産市場は日本の協力の象徴的存在
  • 名井弘美ニカラグア事務所長:「きっと好きになるニカラグア」

    • 2018年4月、オルテガ政権の独裁体制に対する抗議行動で多数の死者が出た。反政府側が対話による解決を求めるも決裂し、多くの学生や知識人が海外に亡命した。国際社会から非難、圧力が出たが、政府はロシアやイランに接近。
    • 台湾との外交関係を続けており、中国との関係は限定的。
    • 2018年の抗議活動により、今年の経済はマイナス成長に転ずる見込み。中南米ではハイチに次ぐ貧困国であり、移民送金のみが増加を続けている。全国に10か所あるフリーゾーンでの縫製品と自動車用ハーネスが主な輸出品。
    • ビジネス環境

      • 世銀のDoingBusiness調査でのランクは極めて低いが、若年層が多く、活力はある。
      • 中米の中で賃金水準は低く、パナマ、米国、メキシコ、韓国などが投資している。
      • 日系企業では矢崎総業が12,000人を雇用。他にBASEが高級チョコレート用のカカオ豆の開発調査を実施している。
      • 政府機関との面談には外務省に事前登録する必要があり、訪問時には筆記係が同席する。
    • JICAの取組み

      • マナグア首都圏開発(上水道、廃棄物リサイクル等)
      • 農村開発(農産品加工・付加価値化、バリュー・チェーン作り)
      • 社会サービスの充実(教育、保健)
  • 小原学ボリビア事務所長:「多様性の国ボリビア その潜在力をどう活かすか」

    • 2009年の憲法改正で国名が「ボリビア多民族国家」となった。エボ・モラレス大統領は3期目。2016年に大統領の任期を無期限にする憲法改正を国民投票で否決されたものの、最高裁判決で無期限再選が可能となった。今年10月に大統領選挙。モラレス現統領vs.メサ元大統領の様相も、世論調査ではモラレス大統領が優勢。
    • 反米政権。中国、ロシア、インド、イラン等が新たなパートナー。中国は二国間で最大の貸付け国。公共事業、インフラ事業、通信衛星打ち上げ、警察支援など。
    • 域内トップクラスの経済成長(2019年の成長率は4~4.5%)。農業が成長を牽引。天然ガス生産の減少と対外債務増加(外貨準備減少)に対し、IMFが懸念している。メガプロジェクトの存在:サンタクルス空港拡張、南米大陸横断鉄道、ブラジルの国際河川港整備(大西洋への出口)、サンタクルスのバスターミナル等。
    • 2019年日本人移住120周年。日系人は約14,000人。オキナワ移住地(小麦、大豆)とサンファン移住地(米、卵)。
    • JICAの取組み

      • エネルギー部門:ラグナ・コロラダ地熱発電所(海抜5000mの高地)の入札準備中(円借款)。
      • 保健・医療(サンタクルスの日本病院などの活用)
      • 課題:日系社会の活用(中南米日系社会との連携調査団派遣)、民間企業・団体との連携(JICAの活用)。
  • 佐藤洋史ブラジル事務所長:「ブラジル 変化への期待:新政権下のブラジルとJICAの取組み」

    • ブラジルはASEANと比較し、面積は約2倍、人口は約3割、GDPは約7割、一人当たりGDPは2.3倍。
    • ブラジルのトランプと呼ばれるボルソナロ大統領。少数政党で議会運営が課題。新政権の支持率は低下している。年金改革は上院で審議中(通れば10年で30兆円が節約できる)。2015、2016年の2年のマイナス成長の後、2017、18年と回復基調にあった。
    • 約200万人の日系社会、若い日系人政治家の存在。日系人が築いた信用。日系企業の進出:第一波は1950年代。第二波は1960~70年代。1990年代末から2010年代前半が第三波。その後足踏み状態。進出企業の4割が製造業。直近ではダイソーの36店舗、すき家(サンパウロに数軒)、ソフトバンクによるスタートアップ企業への投資等。
    • JICAの取組み:民間企業との連携強化を目指し、JICA本部をブラジリアからサンパウロに移転。

      • ベレン市内幹線バスシステム事業(円借款)
      • フィールドミュージアム構想(アマゾンの生物多様性プロジェクト)
      • 農業サプライチェーン強化(穀物輸送インフラ、海外投融資)
      • アマゾンの環境保全(衛星技術を使った監視プロジェクト)
      • 日系社会のネットワーク活用の民間連携、商工会議所との連携。
      • 日系企業の支援によるサンパウロ大学法学部での講座開設

会場の様子


配布資料

講演会資料:JICA中南米4か国事務所長が語る中南米の魅力 ~パナマ、ニカラグア、ボリビア、ブラジルから~ (2019.09.04 開催)