講演会報告「ニカラグアの文化と経済」(2019.09.12開催) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会報告「ニカラグアの文化と経済」(2019.09.12開催)


[日時] 9月12日(木)15:00~16:30
[講師] 鈴木 康久 駐ニカラグア大使
[場所] 日比谷国際ビルB1会議室
[参加者] 31名

  • 1.最新動向
    • 政治

      • 2018年4月の社会保険法に対する抗議活動が暴動に発展、主に学生が携帯などを用いて運動を拡大し、サンディニスタ青年団等現政権支持者と対峙して多くの死者が出た。政府の強硬措置により治安は回復。オルテガ政権は国内のほぼ全ての公的機関を掌握しており、地方でも政権の支持層が3割を超えている。国民の多くは貧困層であり、「反政府派は金持ち」という政府キャンペーンを信じている。野党は分裂しているため、サンディニスタ政権の基盤は盤石といえる。
    • 経済

      • 政治的混乱により、2018年、2019年とマイナス成長が続く。現在の問題は財政赤字と輸出入額ギャップの拡大。観光収入は減り、米国からの直接投資も途絶えた。
      • 世界銀行、IDBなどのプロジェクトは複数年継続するもので、続けて行われている。人権問題に起因する経済制裁により国際援助は人道的なものを除いて減少している。
    • 外交

      • キューバ、ベネズエラとの緊密な関係。米国の中米に対する関心は薄い。ボルトン大統領補佐官の辞任で、従来の強硬な姿勢を和らぐか、関心が持たれている。EUからのコミットもない。OASもニカラグアに言及することはなくなった。
  • 2.ニカラグアの概況
    • 地形と経済

      • 北部山岳地帯(コーヒー栽培)と東部の低地ジャングル。太平洋岸に7つの活火山があり、再生エネルギーとしての地熱発電の可能性が高い(韓国が小規模発電所のS/Fを行っている)。その他、風力、太陽光、水力など、再生エネルギーは発電の半分以上を占める。金鉱山があり、輸出の2割を占めている(カナダ、メキシコ等が開発)
      • コーヒー栽培:北部山岳地帯がコーヒー栽培に適しており、スペシャリティコーヒーを生産。日本の名古屋、大阪の業者が買い付けに来ており、ロイヤル・ホストでニカラグアブレンドのコーヒーを出している。
      • サトウキビをラム酒;キューバの亡命者が始めた。カカオの栽培:純度の高いチョコレート。ナマコを台湾に輸出
    • ニカラグア運河

      • 香港企業が打ち上げたプロジェクトも、実態は中国がバックとの理解が一般的。ルート上のニカラグア湖は淡水湖で水深2mであり、運河構想はそもそも技術的に高い課題を抱えている。
    • 観光地

      • サン・ファン・デ・スル(クルーズ船、サーフのメッカ)、コーンアイランド(欧米人向け、釣り)、ブルーフィールズ(英語を話すため、米系コールセンターがある、閣僚の何人かはブルーフィールズ出身)、マ
    • 日本との関係

      • ODA(橋、地雷除去、小学校建設、ハリケーン被害復興など)
      • 日本の文化事業(日本庭園、日本祭りなど)

    講演後の質疑応答では、医療器材の納入、牛肉など農産品について、日本企業の活動(矢崎総業が12,000人を雇用し、日本人が一人もいない工場で製造したワイヤーハーネスを米国GMやFordに輸出)、サンディニスタ政権の経済政策(中小企業支援に軸足)、中国と台湾に対する姿勢、政府の治安対策、など活発なやりとりが展開した。

    会場の様子


    配布資料

    講演会配布資料:「ニカラグアの文化と経済」(2019.09.12開催)