『ブラジル北東部港湾都市レシフェの地方文化の創造と再創造』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ブラジル北東部港湾都市レシフェの地方文化の創造と再創造』


著者はハイチのヴォドゥ(ブードゥー)教などの宗教とクレオール文化を主に研究してきたラテンアメリカ社会学研究者で大妻女子大学名誉教授。カリブ海の黒人共和国ハイチの調査の後、同じアフリカからのプランテーション労働の奴隷の末裔によるアフロアメリカ宗教が存在し、相対的には豊かなブラジルの中にあってハイチと同じように最貧地域であって、インフラの不備によって先進地域では消失してしまった「コミュニケーションの民衆回路」と呼ぶべき口頭コミュニケーションが存在しているという共通項をもつ北東部のレシフェを次の目的地に選んだ。

レシフェに在住していた社会学者で世界的に知られた文学者、知識人であるジルベルト・フレイレ(1900~87年)と、多様な文学ジャンルのみならず文化運動(アルモリアル運動)で活躍した著作家のマリアーノ・スアッスーナ(1927年~)の軌跡を追うことで、二人の間の共通項(混血イデオロギー)を考察し、民俗・民衆文化に注目する。そのために、レシフェ出身の音楽ポピュラー音楽グループのキンテート・ヴィオラードの新しいアルバム『同じ袋の粉』に出合い、同じ地域に住む人間が階層や年代を超えて同じ文化伝統を継承していること、中でもこのアルバムに収録された『北のライオン』ではレシフェに住む人たちの共有する文化空間が詠われていることを知る。またレシフェの社会体制の一つになっていると言えるカルナヴァルの行列マラカツから、アフロブラジル宗教、黒人フォークロアの行方が関わっているとみる。教養文化に対するに民衆文化の文化的資源をストックするレシフェという都市がこれからどのように変わって行くか、探訪の旅での思索を綴っている。

                                   〔桜井 敏浩〕

(荒井 芳廣 丸善プラネット 2019年3月 28頁 3,200円+税 ISBN978-4-86345-407-1)