ラテンアメリカ協会・米インターアメリカン・ダイアログは2019年9月27日、「分断された国際社会における日本とラテンアメリカのパートナーシップ」をテーマに、第5回共催セミナーをインスティテュート・セルバンテス東京の会場で開催した。本報告書は2019年10月に神戸大学経済経営研究所(RIEB)のDiscussion Paper Series (DP 2019-18) として発表された、ラテンアメリカ協会の桑山幹夫常務理事による“Reappraisal of Japan-LAC Trade and Investment Relations Amid China’s Ascendance”(原文は英語、邦訳:「中国の台頭に伴う日本とラテンアメリカの貿易・投資関係の再評価」)の全文である。以下は、その要旨(ABSTRACT)の邦訳である。
近年のLACの日本との二国間貿易は、量的には中国との貿易ほど活発ではないが、日本の対中南米貿易関係は品目別、貿易相手国別にみても多様化されており、貿易収支の観点でもバランスが取れている。中南米における日本企業の現地法人の活動範囲は、輸出の拡大と多様化(特に第三国市場)、雇用創出、グローバル・バリューチェーン開発(特に自動車産業)に貢献している。近年の中国の優勢で、金融界においても日本の存在感が薄くなっているが、融資や直接投資でも中国に拮抗している。日本のFDIストックは高額に上り、被投資産業も多様化されているため、技術移転と人材開発に貢献している。さらに、日本はLAC地域にとって開発資金の重要な源泉となっている。JBICの対中南米融資の規模は、中国の政策銀行の規模に匹敵する。また、JICAの対中南米ODAの活動の範囲が、「ドナーとしての日本とODA受入国としての中南米」という従来の見方から「グローバルパートナーとしての日本と中南米」という新しい考え方へと変化している。日本はアジア太平洋地域において、独自の協力と経済ガバナンス・モデルを促進しており、中南米は日本にとって経済面、政治面においても重要なパートナーとなっている。要するに、協力は日本と中南米の関係を司る不可欠な要素であり、中南米諸国との通商関係強化が政府間との協力体制の深化にも繋がっている。官民パートナーシップ(PPP)の原則に基づき、通商関係を強化することは、生産性と競争力の促進、集積産業の育成、質の高いインフラ整備、グローバル・バリューチェーン開発など、中南米諸国が抱える構造的な問題に対処するのに役立つと考えられる。
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