講演会報告「ペルー共和国の情勢」(2019.10.15開催) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会報告「ペルー共和国の情勢」(2019.10.15開催)


【演題】「ペルー共和国の情勢」
【講演者】土屋定之駐ペルー特命全権大使
【日時】2019年10月15日(火)10:30~12:00
【場所】新橋ビジネスフォーラム 8F 会議室
【参加者】53名

講演会の内容

ペルーへの日系人移民の開始から今年で120年。2019年は日本・ペルー友好年ということで、両国の関係を一層深めようとする動きが高まっています。このような中、一時帰国された土屋大使をお招きし、日本ペルー経済委員会・日本ペルー協会と共催で講演会を開催いたしました。講演の内容は以下の通りです。

ペルー概要及び近隣の状況

ペルーの特徴としては先住民が多い(約50%)こと、赤道直下でありながらフンボルト海流の影響で気温が低いことなどが挙げられる。国土面積は日本の3.4倍、その約3分の2はアマゾン源流、1割が乾燥した砂漠地帯、残りの4割弱がアンデス山脈である。

多様な農作物に恵まれ、鉱物資源が豊富。地図で見るとおり、ベネズエラとも近いが、ベネズエラはチャベス大統領時代の介入により企業・農地の国有化が進み、その反米左派路線はマドゥーロ政権に引き継がれ、昨年の大統領選挙では不正が疑われて国際社会からの非難を招いた。現在は暫定大領領と大統領の両方を擁したまま事態は膠着状態だが、400~600万人が国外に流出したとみられ、その多くは高等教育を受けた人々ゆえに人材流出は大きな問題である。

ペルーにも80~100万人が流入した。ベネズエラの移民問題に関しては、ペルー政府は自ら主導するリマ・グループを通して様々な対応を行っている。

政治

クチンスキー大統領が汚職疑惑で失脚した後、その第一副大統領であったマルティン・ビスカラ氏が2018年に大統領に就任。クチンスキー時代に比べ、国会と対立する形で政治改革を推進する状況が続いている。

今年7月28日の大統領教書演説でも、汚職対策、政治改革、経済活性化、社会開発、地方分権の5つの柱を中心に施策を展開すると述べた。また、今年の7月に、大統領と国会議員の任期を1年前倒しすることを提案し、国会との対立がさらに深まっている。任期の変更には憲法の改正が必要だが、その法案を大統領側が提出するも国会は否決。これを大統領に対する不信任と受け止め、大統領は国会に解散令、一方国会は大統領に職務執行停止令を出すなど混乱があったが、国会は完全には解散していない。

この流れでは大統領の独裁体制になるのではというマスコミの意見もあるが、ビスカラはもともとエンジニア出身で実務重視型のため、そのようなことはないとの見方もある。今後の動向から目が離せない。

経済

現在、政治情勢はある程度落ち着いており、市場も同様である。経済成長率は4%から2.7%に下方修正されているも、不透明性が高く様子見の状況。

鉱山開発への反対運動が近年多くなっている。開発には地域社会との共生が重要であるが、排水・環境・現地雇用の問題などへの対処が十分でない。特にアレキパ州で開発を進めるサザンカッパー社(メキシコ)や、中国籍企業なども乱開発を行っており、地元住民からの反発を買っている。サザンカッパー社へはライセンスが一時停止となっている。

輸出額の推移では、2018年に500億ドルに迫る過去最高額を記録。内訳は、鉱産物(全体の6割)、石油・天然ガス、コーヒーなどの伝統的産品、その他の非伝統的産品であるが、後者は農産物の伸びが大きい。輸出対象国の1位は中国で日本は7位(昨年5位)。日本への輸出は鉱物資源が約8割となっている。日本からの輸入は資本財(鉱山事業用機器・自動車)など。

農林水産業関係では、多様な産物が存在し、更に栄養価の高い海域のおかげでカタクチイワシをはじめとする世界有数の水産国である。バナナ、ブルーベリー、アボガドなどの伸びが顕著で、地理的利点を生かした温州ミカンの日本への輸出も始まっている。

日本企業は現在51社が進出しており、そのうち現地工場があるのはホンダ、味の素、パナソニック。インフラ関係ではメトロ2号線プロジェクトに日立が参画している。

日本・ペルー間の租税条約が本年8月に実質合意に至った。CPTPPに関しては国内手続きが未完了だが、ペルー政府は国会を通さずとも実現できるとしている。また、ペルーは太平洋同盟の一員として、新たなバリューチェーンなどで連携を行うための対日本共同声明を発表している。新たなビジネスの流れとしては、ソフトバンクのファンドが出資する宅配代行サービス(Rappi)、電動キックボードレンタルサービスなどがある。

日経各企業と大使館、ペルー政府の間での議論の場であるビジネス環境整備委員会では、物流コストの高さ、通関手続きの効率性、労務管理の制約、鉱山許可に時間がかかるなどの問題が取り上げられ、解決に向けた努力が進められている。また、先日は「SDGs達成における高等教育の果たす役割」というテーマで日本・ペルー学長会議が開催され、両国の大学間での意見交換の場が設けられた。
国内の今後の課題としては、インフラ整備、地震・津波対策、顔認証などによる防犯対策が大きな柱となる。

質疑応答

ペルーの若年層雇用事情、CPTPPに対するモメンタム、ペルーが南米で果たす役割、鉱山開発が引き起こす住民争議の原因、中国との自由貿易協定についての質問が挙がった。

尚、最後に、11月18、19日にリマで開催される第13回日本・ペルー経済協議会 日本・ペルー経済フォーラムへの参加が呼びかけられた。

会場の様子


配布資料

【会員限定】講演会配布資料:「ペルー共和国の情勢」(2019.10.15開催)