『ダリエン地峡決死行』 北澤 豊雄 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ダリエン地峡決死行』 北澤 豊雄


コロンビア等南米に2007年以降 4年ほど滞在したノンフィクションライターが、好奇心から日本人が未だ通過したことはないというコロンビアとパナマの国境地帯のダリエン地峡の徒歩横断を目指す。米大陸を南北に貫くパンアメリカンハイウェイが、唯一途切れているこのダリエン地峡は、密林・湿地に覆われ自然環境が厳しいというだけではなく、北米を目指す不法越境者やコヨーテ(不法越境ガイド)、犯罪者、コカインの運び屋やコロンビアの反政府組織FARCと政府軍、パラミリタリー(準軍事組織。1997年に自警軍連合AUCを結成)の三つ巴、四つ巴の抗争も絡んで、強盗殺人、誘拐が横行する危険地帯である。コヨーテの雇い上げよりも、両国にまたがって住む先住民クナ族に導いてもらって、ゲリラ紛争地域を避けるルートを徒歩で越えるべくパナマ国境に向かったが、熱帯林の中での長時間の歩行は苦しく、やっと国境を越えたものの、そこで入国スタンプを受けていないという理由でパナマ国境警備隊に捕捉され、その駐屯地各所で尋問を受け調書を取られて、最終的には首都パナマ市の入国管理局中央拘置所に収監されることになってしまった。見るからに危険そうな収監者の中でいつ解放されるか判らない年末年始の日々を過ごして焦りが募るが、やっと在パナマ日本大使館の飯田将人領事に電話することが出来、その尽力で釈放されて無事ボゴタに戻ることが出来た。
 ダリエン地峡の両国側に住むクナ族の状況、行き会ったコロンビア、キューバ、エクアドル人等密行者の姿、少なからぬ人々が様々な理由でこの地峡での国境越えを試みている実情、パナマでの不法入国者の拘置所の模様など、珍しい体験の記録である。

〔桜井 敏浩〕

(産業編集センター 2019年6月 327頁 1,100円+税 ISBN978-4-86311-231-5)

〔『ラテンアメリカ時報』 2019年秋号(No.1428)より〕