かつてのアステカ語であったナワトル語のチリに起源するトウガラシには、メキシコを含む北米を原産地とし、コロンブス到達以前から南北アメリカで広く栄養価、食品腐敗防止材として栽培され、広く使われてきた。トマトやジャガイモ等とともに新世界の食品は「コロンブスの交換」として世界に広まり、欧州、中東、アフリカからアジアに至るまで様々な料理の調味に使われてきた。トウガラシには薬効があり、マヤ・アステカでも薬として使っていたが、このことは欧州の医学者によっても研究された。今日、辛いものを好む人々の間で調味料、ソースからデザートに至るまで、世界で愛用されている。
トウガラシとは何か、辛さの源、故郷のアメリカ大陸での歴史と利用史、コロンブス以降世界への伝搬、薬にして武器の一面、人はなぜ辛さに熱狂するかを概観したトウガラシを理解するに手頃な解説書。
〔桜井 敏浩〕
(服部千佳子訳 原書房 2017年8月 186頁 2,200円+税 ISBN978-4-562-05408-4 )