講演会報告「長岡技術科学大学が推進するメキシコなど中南米諸大学との国際協働教育」(2019.10.30開催) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会報告「長岡技術科学大学が推進するメキシコなど中南米諸大学との国際協働教育」(2019.10.30開催)


【演題1】「長岡技術科学大学が推進するメキシコなど中南米諸大学との国際協働教育」
【講演者】国立大学法人長岡技術科学大学大学院 宮下 幸雄 准教授
【演題2】「トピー工業株式会社における海外インターンシップ プログラムの取組み」
【講演者】トピー工業株式会社 人事部 グローバル人事室 一柳 由紀氏
【日時】 2019年10月30日 15:00~16:30
【場所】 新橋ビジネスフォーラム
【参加者】約40名

冒頭、司会者から文部科学省が行った「大学の世界展開力強化事業」(2015~19年度)の中間評価で「長岡技術科学大学と4つの高専グループ」が「東京外国語大学・東京農工大学・電気通信大学のコンソーシアム」と共に最高評価のS評価を受けたとの紹介があった。

1.長岡技術科学大学(NUT)が推進するメキシコなど中南米諸大学との国際協働教育
長岡技術科学大学大学院 宮下 幸雄 准教授

  • NUTは卒業論文を課さない代わりに、半年間の企業でのインターンシップを課す。日本からメキシコへの派遣や海外から日本へ留学(費用はNUTが保証)進めている。結果、NUTの全学生数に占める留学生は13%と高く、機械(創造工学課程)の学生の約20%は海外に行ったことがある。
  • ユネスコチェア・技学SDGsインスティチュート;国連SDGsをエンジニア教育の根幹とすることを目的に設立し、ユネスコから「ユネスコチェア・プログラム」として認定された。留学生のために日本語教材を開発し、工学教育を日本語教育に取り入れている。全国の高専に配布。
  • 企業との三者間インターンシップ協定による招聘:渡航費、生活費は受入れ企業がサポートする。これまで成果を上げてきたが、これをどうやって文部省受託事業終了後に継続していくかが課題。
  • 文部科学省「大学の世界展開力強化事業」
    • 工業力が生産からR&Dに移行する中、日本企業が主に展開する東南アジアや中南米で双方向のグローバル人材育成を目的とする事業で、参加機関、参加者の全てが成果を享受できることとに加え、文部省の支援期間以降にも持続できる自立的事業にどう発展できるかが最重要課題。
    • H26年度の「ロシア、インド等との大学間交流形成支援」事業では、インド工科大学マドラス校とインド情報・設計技術大学カーンチプラム校と提携したが、本事業は本年3月に終了、現在報告書を作成中。
    • メキシコについては「NAFTA生産拠点メキシコとの協働による15歳に始まる技術者教育モデルの世界展開」(H27年度)事業を受託し、周辺の高専4校と共にグアナファト大学、モンテレイ大学、ヌエボレオン大学と提携、双方向の人材交流を展開するとともに、日本の高専モデルを紹介し各国での高専導入につなげるのが自分たちのゴール。既にモンゴルとタイで高専を導入している。
  • 中南米の大学との国際交流
    • メキシコ(グアナファト大学他7大学)、ベネズエラ(シモン・ボリバール大学)、チリ(チリ大学他5大学)と提携し、グローバル技学(GIGAKU)構想やグローバル産学官融合構想のもと、高専=技科大教育システムの海外展開を実施準備を行っている。
    • 高専(5年)終了後、工学系大学に3年生編入し、修士・博士コースへの進級。
    • GIGAKUテクノパーク(日本企業の海外進出支援のための産学官連携推進)ネットワーク拠点をメキシコのモンテレイとグアナファト、チリのサンチアゴに設置し、共同研究、インターンシップなど産学連携事業を実施。
    • メキシコ、グアナファト大学との間では短期(2週間)と中期(約4週間)のメキシコからの受入れがあり、2017年には10名、2018年には13名が来訪した。モンテレイ大学との間では6カ月の長期派遣。
    • ツイニング・プログラム(モンテレイ大学、ヌエボレオン大学):学部前半は現地の大学で日本語と専門基礎教育を、後半は日本で専門教育を受けることにより共通単位取得が可能となる。
    • 二校の学位同時授与するダブル・ディグリー・プログラムに基づく留学システム(学部、修士・博士)で、学生および教員が二校を往来する(グアナファト大学)。

2.トピー工業株式会社における海外インターンシッププログラムの取り組み

  • トピー工業株式会社は2021年に創業100周年を迎える。事業は、鉄鋼、自動車用ホィール・自動車部品、建設機械、新規事業(ロボット開発等)海外事業展開は1995年の米国に始まり、中国、メキシコ、インドネシア等で展開。
  • メキシコでは自動車用スチールホィールと自動車向け工業用ファスナーを製造・販売している。インターンシッププログラム開始の背景には当社の積極的な海外事業展開があり、その目的は進出先であるメキシコとインドネシアにおけるグローバル人材の確保である。
  • 長岡技術科学大学、メキシコの大学(グアナファト大学、モンテレイ工科大学)、トピー工業でインターンシッププログラムの3者間協定を締結。メキシコからの受け入れ実績は、2017年(1名)、2018年(2名)、2019年(2名)の計5名。現在、2019年の研修生の1名の採用選考中である。
  • プログラムの実施スケジュール:1-3月に募集、4-5月に選考、5-7月に受入れ準備、7月に来日、3カ月の研修を経て9月に帰国。研修時の公用語は英語。
  • 今後とも当プログラムの継続・発展を目指している。学生の便宜を考え受入れ期間を夏休み中に変更に加え、受入れ体制の強化(英語、スペイン語要員の育成、インターン生の生活環境の整備等)等の課題への取り組みが必要と考えている。

講演後には、メキシコ事例のブラジルへの展開の可能性、インターンシップの経費、実務訓練について、インターン受入れの決断の背景等の質疑があった。

会場の様子



左: 長岡技術科学大学 宮下幸雄 准教授
右: トピー工業 一柳由紀氏