『世界の書店を旅する』 ホルヘ・カリオン - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『世界の書店を旅する』 ホルヘ・カリオン 


著者はスペインで1976年生まれた作家で、バルセロナの大学で文学を講じている。欧米各地、それにラテンアメリカ(中南米)の書店を巡って、そこに存在感をもって静かに佇む書店の様子とその歴史、その地と縁のある作家たちの作品に思いを馳せ、時には書店主の人となりにも触れている。

中南米からは、リオデジャネイロのレオナルド・ダ・ビンチ書店から始まり、サンパウロの書店をブラジルの作家の作品とともに語り、メキシコ市の古本屋やコンピュータを導入していないので客の運と力量、書店主や店員の記憶と勘によって本にたどり着ける書店、さらに書店創立時以来の店主一族がモンテビデオで出版にも手を染めリマに移った書店を紹介したかと思うと、チリのサンティアゴの書店を軍事政権下での出来事にも触れ、同じく軍政を経験したブエノスアイレスの書店に話しが跳んでいる。本屋紀行とも言える随想集。

〔桜井 敏浩〕

(野中邦子訳 白水社 2019年6月 340頁 3,200円+税 ISBN978-4-560-09693-2 )