連載エッセイ40:「南米南部徘徊レポート」その5 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ40:「南米南部徘徊レポート」その5


連載エッセイ 39

「南米南部徘徊レポート」その5

執筆者:硯田一弘 (アデイルザス代表取締役、パラグアイ在住)

不順なアスンシオンの天候 12月22日発

雨が少ない今年のパラグアイでしたが、昨夜はアスンシオンを中心に強烈なTormenta(暴風雨)に見舞われ、市内各地で多くの被害が発生しました。アスンシオン市内だけで30本の樹木が倒れ、電線を切って現在も多くの地域で停電や断水が発生しているとのこと。拙宅のエリアでも深夜から朝8時まで停電が続きました。

ラテンアメリカにおける中国への債務 12月22日発

ところで、ラテンアメリカにおける中国の過度な投資について、新しい映像資料が見つかりました。スペイン語ですが、何度も視ると言葉の勉強にもなりますのでご覧ください。 

これによると、ペルーの対中債務は2009年に5千万ドルだったものが、2018年には向こう三年間で 新たに100億ドル(1.1兆円)の投資の用意があると発表されたと説明していますが、ペルーのGDPが2220億ドルですから、GDPの4%以上が対中債務になる計算。GDP1000億ドルのキューバにとって60億ドル対中債務は6%、昨年台湾と断交して大陸と国交を結んだドミニカ共和国は数々の魅力的な経済開発パッケージの代償として既に60億ドルの債務を抱えたことになっていますが、これはGDP856置くドルの7%に相当します。

親中代表国のボリビア(GDP402億ドル)は対中債務が25億ドル、GDPの6%の借入をしています。アルゼンチン(GDP5,198億ドル)は169億ドルですからGDP比は3%強、親米マクリ政権が踏ん張った成果ともいえるでしょうが、これからは親中フェルナンデスですから、この数字は大幅に増えるでしょう。親中から親米に切替中のエクアドル(GDP1,084億ドル)は184億ドルとGDPの17%が対中債務。南米最大の大国ブラジル(GDP18,686億ドル)は南米のトランプことボルソナル大統領になっても中国からの投資を受け入れ続け、対中債務は289億ドル、GDPの1.5%と比率は小さいものの、絶対額は相当です。

そしてベネズエラ(GDP4,823億ドル)は672億ドルの債務でGDPの14%に上る巨額の債務になっていて、軍事面での支援なども含めると、もはや子会社ならぬ子国家と認定できる程の債務を負っています。

https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD

昨年まで日本が中国に戦後3兆6500臆円(110円換算で330億ドル)ものODA政府開発援助を行っていたと話題になりましたが、この20年の間に中国は南米に猛烈な金額の貸付を行っていたことが良く判ります。幸いにも中国と国交を持たないパラグアイ、GDP405億ドルに占める対外債務比率は20%前後ですが、世銀や米州開銀など中立的な債務が殆どであり、特定の国の支配を受けるイメージでないのは投資家にとっても魅力的に映ると思いますが如何でしょうか?

パラグアイの魅力 12月28日発

アスンシオンの川港

南米はブラジル(ポルトガル語)・ガイアナ(英語)・スリナム(オランダ語)・仏領ギアナ(フランス語)以外は全てスペイン語が主要言語であるために、地域の一体感が強く、域内を転々としながら仕事をする人が大変多いのも特徴の一つ。日本大使館やJICAは勿論、民間企業でも中南米域内の複数国家で仕事をし、多様な文化の比較論が出来る人が本当に大勢います。

今週は、在パラグアイ チリ大使館の経済担当者が、パラグアイは南米域内でも理想郷(Paraiso)の様だと絶賛しながらも、法整備を進めることが外国からの投資家にとって重要であるとの指摘をしています。

「Paraguay necesita mejorar seguridad jurídica para inversores extranjeros」
https://www.lanacion.com.py/negocios/2019/12/27/paraguay-necesita-mejorar-seguridad-juridica-para-inversores-extranjeros/

また別の記事でもパラグアイが域内で最も安定的な経済成長を遂げていると報じています。
https://rcc.com.py/economia/paraguay-se-posiciona-como-pais-mas-estable-de-sudamerica/

勿論、統計や記事によっては南米最低の汚職国家だの、所得水準が低いといったネガティブな文言が並びますが、先進国から途上国まで多くの国々を歴任し、パラグアイに3年滞在して帰任が決まったベテラン駐在員も、「今まで駐在した国の中でパラグアイが一番良かった」との感想を漏らしていましたので、やはり肌感覚としてのパラグアイの良さは、比較対象のサンプル数が多くなればなるほど実感できるのではないか、と確信します。

日本では紅白歌合戦で一年の流行を知ることが出来ますが、Ultima Hora紙電子版にパラグアイの国内歌謡曲の決算記事が掲載されましたのでご紹介します。若者向け指向の強いパラグアイ楽曲、お楽しみください。
https://www.ultimahora.com/las-10-canciones-nacionales-mas-sonadas-radio-2019-n2861891.html

では来るべき2020年が皆様にとってより良い年になりますように、そしてより多くの投資家がパラグアイに来て事業を成功させます様に!

アルゼンチン、ボリビア旅行その1 2020年1月6日発

年末休暇で帰省した次男と家内を乗せて12月29日にアスンシオンを出発し、陸路アルゼンチン→ボリビア→パラグアイ(チャコ)と3,500㎞を走破して無事に帰ってきました。

昨年末から日本ラテンアメリカ協会のホームページに南米南部徘徊レポートというエッセイを寄稿していますが、今回は正に南米南部を徘徊してきました。自家用車でこのルートを周った日本人はそう多くないと思います。合計7泊に及んだ自動車旅行のすべてを一回でお知らせするのは困難ですので、二回に分けてご報告します。

先ずは初日のルート。

いざ出発
29日は朝7時に自宅を出発、途中で次男や家内と運転を交代しながらSalta近郊のChicoanaに夕方7時に到着しました。地図でもお分かりの通り、1200㎞近い距離でしたが、驚いたことに途中何カ所か警察の検問はあったものの、パラグアイではお馴染みの国道の料金徴収が全く無く、これがアルゼンチンの国家財政を破綻させる一つの要因と気付きました。超田舎の村にも信号が付いていて、殆どクルマは通っていないのに一分以上待たされました。

人口53万人、アルゼンチン第六の都市である Salta周辺には立派な環状高速道路が出来上がっているのにこれも無料。
半日かけて到着したChicoanaは人口8千人の村ですが、1576年以来400年以上の歴史を感じさせる建物と、素朴な村人の雰囲気が大都会アスンシオンの喧騒(笑)から逃避するには最適のノンビリ感。

2日目
30日は日帰りでワインの里、Cafayateを訪問。南米のワイナリーはベネズエラ・ペルー・チリ・ウルグアイや同じアルゼンチンのコルドバ等で色々と訪問したのですが、この日はワイナリー見学に至る前に通った南米のグランドキャニオンことカファシャテCafayate渓谷の景観は驚きの連続。30年以上前に本場のグランドキャニオンにも行きましたが、感動の大きさは今回の方が上でした。

Cafayate渓谷は長い渓谷を1時間以上クルマで走るので、観察ポイントが沢山あって本家グランドキャニオンよりも情報量が多く感じました。

CafayateはMendozaに次ぐワイン産地として人気急上昇のSalta地区の中でも注目される新産地です。

3日目
Chicoanaの農場見学を行い、ワイン用ブドウだけでなく、大面積で栽培されているタバコ農場を視察。この地域で食されているナスとタバコの相関関係(タバコはナス科の植物)を確認。タバコは試していませんが、ナスの料理は絶品でした。
午後はSalta市内を視察しましたが、Saltaの街(1582年創建)よりChicoana(同1577年)の方が街として古いことを知り驚きました。
Salta市内のホテルで年明けを迎え、深夜の花火を鑑賞。南米は夜中のカウントダウン後周辺の人達と新年の挨拶を交わし、あちこちで打ち上げられる花火を観ながらブドウを食べるのが一般的習慣。ホテルの年末ディナーでもブドウが振舞われ、アルゼンチンでの初年越しを体験。

4日目
朝サルタを出発して小型ウユニ塩湖とも言えるSalinas Grandesへ。途中4,170mの峠越えもあってスリリングな経験でしたが、標高約3,500m真っ白な塩湖の景色も雄大そのもので、かつて訪問したチリのアタカマ塩地の茶色い殺風景な景色と比べ、白い台地と白い雲に感激した次第です。5日目以降のボリビア編は次回のお楽しみとさせて頂きます。今年も皆さまにとって良い年となりますように!