連載レポート３７：統計に見るラテンアメリカ その2
世界銀行・IFC発表(2019年10月24日) 「Ease of Doing Business Index」

連載レポート 37

統計に見るラテンアメリカ その2
世界銀行・IFC発表(2019年10月24日) 「Ease of Doing Business Index」

執筆者：桜井悌司（ラテンアメリカ協会常務理事）

連載レポート　３７

その２では、世界銀行が毎年発表する「世界ビジネス環境ランキング（Easeof Doing Business Index）とTransparency International社の「腐敗指数（Corruption Perceptions Index）を取り上げる。いずれも海外投資を計画する企業にとっては、極めて重要な情報である。

最初の調査は、毎年、世界銀行・IFCが発表する２０２０年「世界のビジネス環境ランキング」である。英文では、「Ease of doing business index」で、、世界の１９０カ国・地域のビジネス活動の制度的環境を比較評価し、各国のビジネスのしやすさをランキングにしたものである。具体的には、以下の10分野における各種指標において、トップの国を100%として各国のトップからの差をスコア化している。総合スコアは、各種指標のスコア合計を単純平均して評価したものである。

– 事業設立の容易性（Starting a business）
– 建設許可取得の容易性（Dealing with construction permits）
– 電力事情（Getting electricity）
– 不動産登記の容易性（Registering property）
– 資金調達環境（Getting credit）
– 少数株主保護（Protecting minority investors）
– 納税環境（Paying taxes）
– 貿易環境（Trading across borders）
– 契約執行状況（Enforcing contracts）
– 破綻処理（Resolving insolvency）

表１では、左側の国々は、ビジネス環境が良好な国が掲載されており、ニュージーランドから始まり、シンガポール、香港、韓国等のアジア諸国、デンマーク、ノルウエー、スエーデン等の北欧諸国が上位を占める。

一方、ラテンアメリカのビジネス環境は、世界比較の点から見て、相当低位に位置している。１９０カ国の内、１００位以下の国は、チリ、メキシコ、コロンビア、ジャマイカ、コスタリカ、ペルー、パナマ、エルサルバドルのみである。その他は、１００位以下で、南米の大国、ブラジルは、１２４位、アルゼンチンは、１２６位となっている。総じて、ビジネス環境が悪いことが理解できる。

次に２０１６年から２０２０年までの５年間の順位の推移を見ると、ボリビア、ハイチ、ベネズエラが、それぞれ、７ポイント、３ポイント、１ポイント順位を上げているが、その他のリスト掲載国は軒並みランキングを落としている。各国とも投資誘致を熱望しているが、ビジネス環境の向上にはほとんど努力をしていないことが理解できよう。アジアの諸国は、競争が激しいので、切磋琢磨してビジネス環境の改善を図り、外資誘致に努めているが、ラテンアメリカ諸国の場合、競争が少なく、我が道を行くという国が多いために、投資誘致の改善に真剣に取り組んでいないようである。投資誘致において具体的成果を上げるには、受け入れ国の熱意とビジネス環境の改善が必須の事項であるが、投資国である日本や欧米がラテンアメリカ主要国との間で行っている各種２国間ビジネス協議会などで、常にビジネス環境の改善の必要性をアピールしていく必要があろう。

表１　ビジネス環境ランキング　２０２０

出所:世界銀行　２０１９年１０月発表

表２　ラテンアメリカ諸国のビジネス環境順位の推移

出所:世界銀行　Ease of Doing Business Index
Corruption Perceptions Index 2018
(腐敗指数)

この調査は、Transparency International社が、毎年行う「世界の腐敗認識指数」（Corruption Perceptions Index）の　国際比較統計・ランキングである。２０１８年では、１８０カ国・地域を対象としている。

表１では、各国政府の腐敗認識指数スコアと国別順位を掲載している。政府・政治家・公務員などの公的分野での腐敗度を10～11機関が調査した12～13種類の調査報告に基づいてスコア化し評価している。具体的には、①報道の自由度、②ビジネス環境ランキング、③公共・インフラサービス規制、④小売・流通規制、⑤インターネット自由度、⑥士業・専門サービス規制、⑦製品市場規制、⑧不動産登記手続き（日数）、⑨契約履行手続き、⑩関税率、⑪法治度、⑫政治的安定度、⑬法規制の健全性が評価基準になっている。単位はポイントで、１００に近くなるほどクリーンとなっている。全対象国の平均は、４３点で全体の３分の２が５０点以下である。

表２は、２０１５年以降２０１８年までの４年間の推移を紹介したものである。これによると、カリブ海諸国のバルバドス、ジャマイカの顕著な改善を見せていることが理解できる。その他、過去４年間で２ポイント以上改善した国として、ハイチ、アルゼンチン、エクアドル、トリニダード・トバゴがあげられる。反対に悪化した国は、エルサルバドル、ウルグアイ、ボリビア、チリ、メキシコ、ドミニカ共和国、ブラジル、ボリビア、ホンジュラス、メキシコ、パナマ、ニカラグアである。

腐敗度は、ビジネス環境と密接に結びついているので、ラテンアメリカの政府には、問題解決のために最大の努力を行ってもらいたいものだ。

表１　世界の腐敗認識指数　

出所：Transparency International

表２　過去４年間の得点の推移