パラドックスに満ち、ダイナミックスと豊かさ、成長と進歩の反面、政治・社会に機能不全が見られるブラジルを、様々な切り口から地図で絵解きしている。
植民地支配から帝政、旧共和制を経て文化的アイデンティティの目覚め、ブラジリアに象徴される国家建設と交通等インフラ整備による開発、工業化と天然資源開発、エネルギー、論争の的アマゾニアの開発と保護、多人種混血が生み出す文化、スポーツ、宗教、文化遺産からメディア権力、貧富の格差と根源にある教育機会や保健・医療、そして土地所有アクセスの不平等、政治や行政等の腐敗、暴力と人権、軍政に対するに民主主義の根づき、2015年以降の政治の分極化と不安定化、ラテンアメリカそして国際社会の中でのブラジルのプレゼンス、その事例としてスポーツの大イベント開催に至るまで、実に多岐にわたる項目を、美しい地図と図表で解りやすく示している。
〔桜井 敏浩〕
(中原毅志訳 原書房 2019年12月 172頁 2,800円+税 ISBN978-4-562-05695-8 )
〔『ラテンアメリカ時報』 2019/20年冬号(No.1429)より〕